博物館に眠るアイヌの丸木舟が、3D技術で再び水上へ
博物館の展示室で静かに佇む木製の舟。触れることも乗ることもできない文化財を目にしたことがある人は多いはずです。
北海道白老町のウポポイを運営する財団が、地域の高専や造船会社と連携し、伝統の丸木舟を現代の技術で水上へ蘇らせるプロジェクトを始動しました。
ガラスケースの展示から、
水上で漕ぎ出す道具へ

アイヌ文化において、丸木舟はかつて人々の暮らしや移動を支える大切な乗り物でした。しかし現存する資料は少なく、今では博物館などで保存され、遠くから眺める鑑賞物となっています。
今回のプロジェクトでは、苫小牧市美術博物館などが所蔵する実物の丸木舟を3Dスキャンして立体データを取得します。貴重な文化財を傷つけることなく、船体の構造や特徴を工学的に記録することが可能になりました。
これまでの文化継承といえば、職人による技術の保存や資料の静かな保管が中心でした。今回は工学や地域産業の力を借りることで、歴史の遺物を再び動かす試みへと踏み出しています。
3Dデータから模型製作、
未来のFRP船へ

プロジェクトには、苫小牧工業高等専門学校の教員や学生が参加しています。得られた3Dデータをもとに小型模型を設計し、3Dプリンタを用いて造形し、船としての性能を検証していきます。
地域の株式会社アタカ造船所も加わり、専門的な造船工学の視点から技術助言を行います。地域の若い世代がデジタルものづくりを学びながら、先人たちの知恵を工学的に読み解く場が生まれました。
最終的な目標は、繊維を混ぜた強化プラスチックであるFRP素材を用いた、実寸大の丸木舟の製作です。完成後はウポポイのポロト湖畔などで、来場者が実際に乗れる体験プログラムを目指しています。
2026年10月5日には関係者が集まるキックオフミーティングが開かれ、学生へのレクチャーや園内視察が行われました。眺めるだけだった伝統を、水面の揺れとともに体感できる日は、すぐそこまで近づいているのではないでしょうか。
ウポポイ(民族共生象徴空間)
【所在地】北海道白老郡白老町若草町2丁目3
【開園時間】09:00〜18:00(時期により変動あり)
【入場料】一般大人1,200円、高校生600円、中学生以下無料
【公式サイト】ウポポイ(民族共生象徴空間)






