食卓を華やかに彩ってくれる「野菜」は、伸びやかに食べよう

1976年に刊行され、料理ブームの先駆けとなった『聡明な女は料理がうまい』。これは、社会が進化しても変わらない“女性の生き方”について、“料理”と“台所”を通して語られているベストセラーです。今回は、その中から「野菜の魅力」と「おすすめの調理法」について紹介していきましょう。

野菜は伸びやかに
食べたいもの

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数ある店々の中でも、八百屋ぐらい生き生きとカラフルで明るい店はないのに、そこではあんなにみずみずしく若やいでいた野菜が、どうして食卓ではしょぼんと隅のほうに縮こまってしまうのかと、いつも不思議に思う。まるで女学生時代はクラスの華だった陽気な少女たちが、社会に出ると脇役の座に追いやられ、無気力で退屈な女としてしょぼくれていくのと同じような感じがする。だから私は、ウーマン・リブと同じように、野菜リブを唱えたい。

野菜がなにも肉や魚を圧倒すべきだとも思わないが、もっと大きな顔をして肉や魚と対等な地位を占め、食卓に堂々と肩を並べてほしい。

野菜だって、いまや高いのだ。作る手間を思えば当然だと思うが、ともかくギョッとするほど高くなった。値段からいって、肉や魚と同じくらいのウエートになってしまったのだから、野菜にも大いに重い役を振るべきだと思う。

ほうれんそうの
とっておきの食べ方

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にんじんやじゃがいももよいけれど、私はもっと青い菜っぱをモリモリと食べたい。葉っぱといえば、まず思い浮かべるのはほうれんそうだ。私がいちばん気に入っている食べ方は、昔、台湾から亡命してきてしばらくわが家に居候していた青年が教えてくれたカレー酢炒めである。

牛のこま切れでもひき肉でもいいからほんのちょっぴりを炒めた上に、ほうれんそう1束を加え、しんなりしかけたところへ、酒大さじ1杯、しょうゆ大さじ1杯、酢大さじ1杯、カレー粉小さじ1杯、塩小さじ半杯、砂糖小さじ半杯、片栗粉小さじ1杯を合わせた汁を振りかけ、手早くまぜ、汁けが炒り上がったら火を止める。

ほうれんそうは生でも食べられる。ただ洗って切って、フレンチドレッシングをかければよいのだが、なぜか格好がつかない。ベーコンをこまかく刻んで焦げる寸前までカラカラに炒めて脂っけが落ちたもの、つまりベーコン・クリスプをサラダボールのほうれんそうにまぜ合わせるのが必須条件なのだ。

もう一つ、やはり生で食べるのがおいしいものに、白いマッシュルームがある。切り口がすぐ黒ずむから、スライスしたらただちにレモン汁かドレッシングを振りかけること。このマッシュルームを、ほうれんそうのサラダに加えてもよい。さわさわととても楽しい歯ざわりだ。

西洋野菜は
使いこなせばこっちのもの

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マッシュルームをはじめ、いわゆる西洋野菜というのは、日本ではまだ使いこなされてはいないようだが、カリフラワー、ブロッコリー、芽キャベツ、グリーンアスパラガスなどはとても重宝な野菜なのだから、もっともりもり使ったらよいと思う。

このいずれも、まず、塩を1つまみ入れた湯で、くれぐれもゆですぎないように、まだ心もち歯ごたえがかたいぐらいのところまでゆでる。ゆでたてにバターと塩、こしょうだけでも十分においしい。ホワイトソースやチーズソースをかければ、いっそうのごちそうになる。

カリフラワーはカレーの味とも相性がよい。カレーの残りでもあったら、暖めてまぶしてみよう。

芽キャベツはビーフシチューなど、トマト味のソースによく似合い、赤の中の緑は彩りとしても美しい。

グリーンアスパラガスは熱いうちにドレッシングをかけてホットサラダにしてもおいしい。かたゆで卵をこまかく刻み、マスタードをまぜ、フレンチドレッシングでのばした黄金色のソースを、青々とゆで上がったアスパラガスにかけると、目にもあざやかな一品になる。グリーンアスパラガスには日本的な装いもよく似合い、削り節としょうゆをかけたおひたしにしても、豆腐で白あえにしてもおいしい。

野菜こそ食卓を彩る
四季の花

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お花といえば、私には華道のたしなみがないが、私にとって野菜こそが四季の花々である。年々季節感が希薄になるばかりの都会生活の中で、私はせめて八百屋の店先で野菜のシュンをとらえては、できる限り食卓に季節を生けるように心がけている。

春ーーもぐらのようにそっと首を出して春のきざしをまっ先に知らせてくれるふきのとうは、おひたしか佃煮にする。ほろ苦いオトナの味だ。しかし、これはあまり八百屋に現われないのがくやしい。

夏ーーきゅうり、トマトはこのごろいつでもあるけれど、やはり夏がいちばん。自然に育ったものは塩を振って食べるだけでも十分においしい。なす、かぼちゃ、みょうが、オクラ、ししとう、しそ、にんじんなど、ありったけの野菜を集めた精進揚げの饗宴は夏バテ防止にこの上もない。

秋ーーお月見のころには、たとえマンションの窓の月でも、やはり枝豆をゆでて里いももきぬかつぎにして、初秋の風雅を楽しもう。秋が深まると、きのこがいろいろ現われて、春の山菜同様の楽しみがひとしきりつづく。山里へ旅したおりはこまめに市をながめたり、宿の人に頼んだりして、珍しいきのこを味わってみよう。これもだいたいごく素朴に煮たり焼いたりするだけで十分おいしい。

冬ーー白菜と大根とねぎがどっしりと貫禄をつけて頼もしいきせつ。風もふところも寒々しいときにはしごく経済的で量感あふれる白菜の鍋、砂鍋獅子頭(シャーゴーシズトウ)でホッカリと暖まろう。

※書籍からの引用にあたり、一部表記を編集しております。


聡明な女は料理がうまい
コンテンツ提供元:アノニマ・スタジオ

桐島洋子/Yoko Kirishima

文藝春秋に勤務の後、フリーのジャーナリストとして海外各地を放浪。70年に『渚と澪と舵』で作家デビュー。72年『淋しいアメリカ人』で第3回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。以来、メディアの第一線で活躍するかたわら、独身のままかれん、ノエル、ローランドの3姉弟を育て上げる。ベストセラーとなった『聡明な女は料理がうまい』や、女性の自立と成長を促した『女ざかり』シリーズをはじめ、育児論、女性論、旅行記などで人気を集めた。