日本に存在する「買い物難民」という人々を知っていますか?

各省庁が公表しているデータや資料には、ニュースなどであまり取り上げられない、けれども興味深いものがたくさんある。ここで話題にする「買い物難民」もそのひとつだろう。

買い物難民とは「流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買物が困難な状況に置かれている人々」を指す。別名、買物弱者とも呼ばれている人たちのことだ。経済産業省はこの問題について2015年に『買物弱者応援マニュアルver3.0』を発表した。

その数、約700万人

高齢化の進んだ過疎地を主として、買い物難民の問題は深刻化している。前述の『買物弱者応援マニュアルver3.0』によると、なんと日常の買い物に困っている人の数は、国内で約700万人と推計されている。

この記事をスマホやPCで読んでいる人には、にわかに信じがたいかもしれない。でも、シャッターだらけの商店街、いつの間にか潰れてしまった駅前のスーパーマーケット、そこに暮らす高齢者や障がいを持つ人たちを想像してみると、難民問題は現実味を帯びてくるはずだ。

つまり、これは過疎地だけの話じゃない。都市部(とくに郊外)でも顕在化しつつあるわけだ。自動車ありきの生活を送り、いわゆるロードサイド店舗に依存した日常を送る人にとって、買い物難民は他人事ではなく、明日の自分たちかもしれない。

買い物難民に
救いの手を差し伸べた
「ふるさと商人」というアイデア

ここからは明るい話題へ。『買物弱者応援マニュアルver3.0』の発表が示すように、この問題への取り組みはさまざまなところですでにはじまっている。配食サービス、買い物代行、さらには新しい移動手段や物流システムの構築といったかたちで、社会への貢献とビジネスとしての収益面を両立させる企業も出てきた。

なかでも、茨城県を拠点に栃木県、埼玉県などでサービスを提供している「ふるさと商人」はとてもユニークだ。

同社の取った手段は、移動販売。

鮮魚や精肉、野菜のほか、スイーツや和菓子といった商品を買い物難民が多く暮らす地域へ出張して販売する。おもしろいのは、“仮店舗”の場所だ。「ふるさと商人」は郵便局や地元企業にスペースを借りて販売を行っている。

なるほど、地域に馴染みの深い場所で販売することで、消費者は訪れやすいし、企業としては固定費がかからない。スペースを提供する側にしても、地元民に馴染んでもらうという意味でメリットがありそうだ。

そこから生まれた
連日売り切れの大ヒット商品

2015年にスタートしたばかりの「ふるさと商人」だが、順調に売上を伸ばしている。移動販売の日には長蛇の列ができることが珍しくないという。

その背景には、地域のニーズを捉えたオリジナリティのある販売方法というのがもちろんあるだろう。でも、それだけじゃない。肝心なのは商品力だ。「ふるさと商人」が支持されているのは、同社の販売する商品が魅力的だから、というシンプルな理由。早くもヒット商品だって生まれている。
同社のチーズスフレは、「外はふんわり、中はしっとり」新食感に魅了される人続出の大人気のスイーツ。なめらかな口どけとやさしい甘みが発売直後から口コミで広がり連日のように売り切れてしまうため、電話やネットでの販売を望む声が絶えないという。

そんな声に押されて、2016年5月19日に「ふるさと商人」はECサイトをオープンした。移動販売で買い物難民に取り組みつつ、美味しいものをより多くの人に味わってもらおうという試みだ。

目玉商品は、もちろん「チーズスフレ」。ネット販売限定で甘酸っぱさがクセになる「イチゴ味」とリッチな味わいの「チョコ味」の3色スフレがセットになっている。

買い物難民の問題解決から生まれたーーというと、ちょっと構えすぎか。でも、一見とっかかりのない社会問題だって、アイデアと“美味しさ”で乗り越えられるかもしれない。

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