体感できない技術?誰もが運転上手になれるクルマがドライブを面白くする
囲碁や将棋で人間が負かされたり、人間と見分けがつかない記事を書いたり最近、何かと話題のAI・人工知能。近い将来人間の出る幕がなくなるのではないかというほど、あらゆる分野において、AIの進化が期待されていますよね。もちろん、クルマ業界も例外ではありません。様々なメーカーがAIを利用した自動運転の実用化に向けて研究開発に取り組んでいます。
そんな流れの中、まったく異なった「もうひとつのクルマの未来像」を選択肢として提案しているメーカーが日本に存在するのです。
〝Be a driver.”
それが、人とひとつになれるクルマづくりをコンセプトにするMAZDAです。
そもそも、何故
自動運転は必要なのか?
ドライバーにとって自動運転が必要なのは、簡潔に言えば「疲れる」からでしょう。前提として、人は「疲れる」「ミスする」「身体能力が落ちる」という生き物です。それは誰にも避けられない。「運転をクルマに任せ、人による運転を放棄したい」と考えるのも、自然な流れなのかもしれません。
確かに自動運転も素晴らしい技術です。判断ミスによる事故を軽減できるかもしれないし、居眠り運転だってしなくて済む。しかし、もう一つの未来像も描けるとMAZDAの技術者は示唆しています。
「運転で疲れるのなら、疲れさせないように工夫すればいい」
ドライバーに「疲れさせない」「ミスをさせない」「身体能力の低下をカバーする」といったテクノロジーがあって然るべきなのだと。「運転の楽しさを人から奪いたくない」、あくまでドライバーを中心においた視点で、運転を根本から見直したテクノロジー開発への挑戦です。
すべてのドライバーが気持ちよく
"理想的な運転"をするには?
そもそも、クルマの運転とは、エンジン・ステアリング・ブレーキのそれぞれ独立した装置を人間がバランスよく制御してクルマを動かすこと。つまり、これらがバラバラでは、滑らかで気持ちのよい運転はできません。そして、この効率的なクルマの運転において、「荷重移動」は大切なポイントとなります。
例えば、クルマの動きをスノーボードの動きに置き換えてみましょう。ボードがスムーズにターンするには、前後左右に荷重が移動されている必要があります。正しく荷重が移動されていればスピードが出ても転ばず、ボードは思い通りに曲がってくれる。「思い通りにコントロールできる!」と思えた瞬間、なんとも言えない快感を覚えてワクワクしてくるーー。
クルマの運転において、この最適な「荷重移動」をクルマ(エンジン)がサポートするのが「G-ベクタリング コントロール(GVC)」という技術なのです。
ドライバーの立場からすれば、前後左右の荷重コントロールが自然であればあるほど、運転時の緊張やストレスから解放される。思い通りに動いてくれるから、ドライバーを疲れさせない。
そんな大切な「荷重移動」の方法を、教習所では習いませんし、どうすれば良いのか分からないもの。そもそも、その大切さも知りようがないかもしれません。ドライバーに密かに任されていた荷重移動のバランスが、運転の上手or下手を左右し、運転を難しい・怖いと感じさせる理由にもなってきました。
GVCでは、ドライバーのステアリング操作をもとに、エンジンが微小に出力を調整することで、この荷重移動をクルマが適切にアシストします。その結果、運転のスキルに関わらず、誰もが気持ちよく理想的な走りを実現できるのです。
雪道だってコワくなくなるかも?
GVCは、こんなシーンで活躍する
いまひとつピンとこないという人のために、GVCが実際どのようなシーンで活躍するのかを見ていきましょう。
■急カーブでの揺れを荷重コントロールで抑え、安定した走りを生み出します。
■直線路でも、実はドライバーは頻繁にハンドルの修正舵を行っています。GVCはこの修正舵を少なくし、ドライバーの負担を軽減、疲れにくくなります。
■雪道やアイスバーンなど滑りやすい路面でも、前後輪の最適な荷重バランスにより、車体が安定。厳しい路面状況でも、安心感が高まります。
■頭や体の揺れをセーブするので、同乗者のクルマ酔いも軽減します。
つまり、運転中のあらゆるシーンで、より快適なドライブをサポートしているのです。
ドライバーが
「体感できない技術」
GVCのエラいところは、自然な運転フィーリング。あまりにも自然すぎて違和感がないので、ドライバー自身でさえ「これがGVCか!」と体感できるものではなく、「自分の運転が上手くなった」と感じるのだそう。
「それでいいんです」とMAZDAの開発者たちは言います。何故なら、それこそが「人間中心の開発思想に基づく」というMAZDAのクルマづくりだから。機械ではなく、あくまで、人の感覚を優先しているのですね。
「運転が上手くなった!」という喜びは、自信や安心感、ドライブすることへのワクワク感につながります。その結果、自然ともっと遠くへ行きたくなるーー例えば、北は北海道、南は九州まで、これまで「マイカーで行く」という選択肢すら生まれなかった場所へドライブするという、まったく新しい体験をもたらしてくれるかもしれませんね。
もっと詳しくメカニズムを知りたい人は、以下をチェック。MAZDAの開発者がクルマの運転を「和食の出汁」に例えたユニークな切り口でわかりやすくGVCを解説しています。