こういうお菓子の存在だけで「沖縄って旅行先としておもしろいよな〜」と思う。

青い空や海を抜きにしても、沖縄は魅力的な旅行先だ。
 
なんて読むのかがわからない漢字の田舎の風景は言わずもがな、市街地だって他県とはまったく違う雰囲気を感じる。
 
それは気候のせいだけじゃない。
 
那覇空港から市街地に向かう道すがらにも赤瓦の家をたくさん見かけるし、チェーン店までもがローカル。旅行者としてはそういうところにワクワクする。
 
だから、漠然と「リゾートを楽しもう!」というだけじゃ沖縄旅行はもったいない!
 
世界中で、沖縄でしか体験できないサムシングを付け加えたほうが、旅は断然楽しくなる。なにも大層なことじゃなくっていい。
 
この店で沖縄そばを食べたいとか、インスタで見た美しい景観の橋を渡ってその先の島を楽しみたいとか、沖縄の伝統的な焼き物“やちむん”の器が欲しいとか…そんなサムシングのひとつとしてここで紹介したいのが「月桃餅」というお餅だ。

写真がその月桃餅。沖縄ではお餅を意味する方言「ムーチー」の名で知られる。

(沖縄出身の人にとっては当たり前すぎる話だろうけれど)その名の通り月桃の葉に包んで蒸したものとなる。黒糖や紅芋、うこんなどが練りこまれていて、それによって色みも違ってくる。

当地では伝統的なお菓子で、旧暦の12月8日に子どもや家族の健康を祈って祈願する、神仏へのお供え物だったとか。昔は家々で作って親戚に配っていたぐらい県民には身近な存在。今でも給食に出ることもあるらしい。

では、観光客がそれを食べようと思ったら、どこに行けばいいのか?

その答えは市場だ。地元の人が買い物するようなローカル市場の商店の軒先が、ムーチーの定位置となっている。

例えば、写真は那覇市の公設市場での一コマ。お土産物屋もたくさんある国際通り近くにあり、観光で訪れる人も多いが、少し路地を入っていくと地元の人が利用するローカルな商店がある。

そして、ここでもいくつかのお店でムーチーは売られている。お値段はどこでも2~3個入りで200円とかそんな具合。ただし、お店によって包装の仕方もバラバラだし、味はもちろんのことかたちとかサイズも違ってくる。

それもそのはず、どのお店でもオバァ(沖縄の方言でおばあちゃん)の手作りなのだから。

比較的国際通りに近い場所にある『やまや』。家族で毎朝4時からムーチーを作っているそう。

戦後から3代続く『大城もちや』。毎朝、月桃の葉を洗うのが大変なのだとか。

いろんなお菓子が並ぶ『松原製菓店』。当然、ムーチーもラインナップされている。購入するのは、観光客ではなく、主に地元の人だ。

ムーチーは、大量生産するようなものじゃない。毎朝オバァがお店で売る分を手作りするのが基本なのだ。

それぞれのお店の看板オバァにいろいろ聞いてみたところ、食べごろは「翌日ぐらいがちょうどいい」らしい。理由は「作りたては柔らかくて形がくずれやすい。かと言って、時間が経ちすぎると瑞々しさが損なわれるから」とのこと。

そう、ムーチーは生菓子だ。

日持ちしないから、サータアンダギーやちんすこうのようにお土産にはならない。1個100円もしないお餅の、値段では決してはかれない価値がそこにある。沖縄まで行って食べるしかないのだ。

ムーチーの味?

オバァ曰く「月桃の香りが独特なので、地元の人でも大好きという人もいれば、苦手という人もいる」そうだ。

でも、美味しいとか美味しくないとか、そういうのは野暮じゃないか。

沖縄にしかないお餅があって、今でもオバァが手作りで、市場で販売していて……。

そういうのを全部ひっくるめて体験するのが、沖縄の楽しみ方のひとつだと思う。

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