TOYOTAの従業員教育から生まれたWEBムービーが、旅情を掻き立てる名作だった

ロードムービー?小説?BGV?ーーそのどれにも当てはまらない、まったく新しい視聴体験を生み出すトラベルノベル「風の惑星」を観たことがあるだろうか。昨年10月ブラジルを出発して数カ国で繋がれてきた壮大な物語がついに最終回を迎えた。

ストーリーがいくつもの国を渡り歩いてきたように、このプロジェクトを紹介するウェブメディアの記事もまたORICON NEWSCINRA.NETとそのステージを移し、そして物語のクライマックスとともに、TABI LABOがアンカーとしてバトンを受け取った。

観ると必ず旅に出たくなる、この不思議なストーリーの魅力を改めて紹介したい。

トラベルノベル「風の惑星」とは?

このトラベルノベル「風の惑星」は、トヨタ自動車の従業員が運転する「5大陸走破プロジェクト」の一貫として生まれた。世界の5つの大陸を走破するという壮大な試みは、2014年のオーストラリア大陸、2015年の北米大陸に続き、昨年の2016年には南米大陸へとつながった。このプロジェクトの最大のミッションは、「もっといいクルマづくり」を考え、それを支える「人づくり」に取り組むということ。南米ならではの熱帯のぬかるみや標高5,000mを超える高地山岳路のほか、ダカール・ラリーのコースにもなっている砂丘などでも走行を実施。

総勢110名、約3ヶ月半にも渡る映像記録。それを元にエンターテイメント作品にしたのが「風の惑星」であり、物語の舞台はブラジル、パラグアイ、チリ…と南米計7ヶ国となった。

3人の豪華キャストが
「意外な手法」で参加している

■浅野忠信「画伯」による印象的なプロローグ

「風の惑星」のプロローグ。そのイラストを担当しているのは、俳優の浅野忠信さん。浅野さんの絵はSNSなどで評価も高く、時にシュールであり、時に味わい深い。今回、メインのモチーフになっているのはもちろんクルマだ。ストーリーのエンディングでは、ある「リレー」が描かれていてトヨタのプロジェクトを連想させてくれる。

■ロックボーカリスト岸田繁によるオーケストラ楽曲

耳に残って離れない。そんな印象的な「風の惑星」の音楽を手掛けたのは、ロックバンド「くるり」のボーカリストである岸田繁さん。くるりとは対照的なオーケストラ楽曲は、岸田さん自身から提案されたものだという。クルマで大陸横断する風景を「バードアイ」の視点から表現した楽曲は、旅の高揚感を思い出させてくれる。

■俳優・佐藤健のモノローグによるストーリー展開

乾いた南米の映像に息を吹き込んだのは、俳優の佐藤健さんだ。「ある理由」から「ま」「ゆ」「み」という3文字を発音できなくなった男、という難しい役どころながら、佐藤さんは情感豊かなモノローグで演じきっている。

旅先の景色を描写する言葉、人々との出会いによって呟かれる言葉には、思わず惹き込まれてしまうに違いない。佐藤さんのモノローグは、観る人を南米へトリップさせる臨場感に溢れている。

「ひとはなぜ、旅をするのか?」
クライマックスでその答が提示される

物語のクライマックスで、舞台は、南米大陸最南端の街から南極大陸へー。「ひとはなぜ、旅をするのか?」誰もが一度は考えを巡らせるに違いない普遍的な疑問。地の果てで、主人公はその答えにたどりつく。

巨大な氷河を目の前に、ラストシーンで描かれる主人公の心情の変化は、大きな見どころの1つである。

テレビのモニターにつないで観たい
圧倒的な映像美

「風の惑星」のアドバンテージは、現地の空気感がダイレクトに伝わってくる映像美にある。南米の街に溢れる鮮やかな色、乾いた風、剥き出しの岩肌、穏やかな人々の表情…。全篇10話を通せば、まるで一本の映画かドキュメンタリーを観たような充実感を味わえるはず。

できればPCをテレビのモニターにつないで、大画面で映像美を堪能するのがオススメ。「ひとはなぜ、旅をするのか?」そんな疑問を、改めて自分に問いかけながら、週末の夜に瞑想するかのように見入るのはどうだろう?あるいは、南米料理やドリンクをつまみながら主人公と旅するような気持ちで鑑賞するのはいかがだろうか?

いずれにしても、観終わったら、きっと旅に出たくなってしまうことだろう。