どうやって決まる?あなたの知らない絵画の「値段と価値」

フランス近代絵画に魅せられ、画商として約30年間で2万枚もの絵画を売買してきたという、高橋芳郎さん。

彼は自身の著書『「値段」で読み解く魅惑のフランス近代絵画』(幻冬舎)にて、作品の値段を見れば画家たちの絶頂期から低迷期までの画風の変遷が分かる、と語ります。

フランス近代絵画ならではの傾向や値段がつく仕組みを知ることで、これまでどこか遠い存在だった絵画の魅力にも触れられるはずです。

需要と供給で成り立つ
絵画ビジネス

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そもそも、資本主義社会の市場におけるモノの値段は需要と供給によって決まります。当たり前のことですが、需要が多くて供給が少なければ価格は高くなり、需要が少なくて供給が多ければ価格は安くなります。

たとえば、無名の誰かが趣味で描いた絵を売ろうとしても、なかなか買い手は見つからないでしょう。仮にインターネットのオークションに1円で出品して入札がなかったら、それは需要がないということなので、価値としては0円に等しいと考えることができます。

一方で、もしゴッホの知られていない絵がオークションに出品されたとしたら…その価値は数千万円あるいは数億円以上になるはずです。なぜなら、その絵をどうしても欲しいと思う人が世界中に数多く存在するからです。

生前、ゴッホの作品は展示会や販売会でも、たった1枚しか売れなかったといわれています。しかし現代であれば、何億円払ってでもゴッホの絵が欲しい、という人はたくさんいます。このように、絵画の値段は流動的。需要と供給で決まるのです。

絵画の価値は
「価格」だけではない

美術に興味のない一般の人が絵画を意識するタイミングといえば、オークションでの高額落札ニュースを見たときくらいでしょう。

確かに、1枚の絵画が何億円もの大金で取引されるニュースは目を引きます。しかし、絵を価格だけで判断してほしくないと思っています。価値が上がって想像を絶する高値で取引されるようになるには、ただ有名画家の作品であるという「ブランド価値」だけではなく、素直な気持ちで作品に向き合ったときに、見る人を魅了する「芸術性」がなければならないからです。

昔の画商の世界では、仲間同士で高額落札を繰り返して、絵や作家の価値を上げていくという手法もありましたが、そのような人為的操作で一時的に価値を上げても、結局は長続きしません。多くの市井の一般人がその作品に引きつけられて、何としてでも手に入れたいという願望が高まるからこそ、価格が高くなるのです。

さらにいえば、絵画の価値は価格だけで測れるものではありません。私は、美術品の価値は大きく3つに分けられると考えています。

ひとつは、ここまで説明してきたような資産的価値(価格)、そして芸術的価値(価格や作者などをまったく気にせずに、ただ絵の前に立って眺めたときの美しさのこと)。最後のひとつは、社会的承認価値(文化財を所有することのステータス)です。

この3つの価値を見ても分かるように、絵画を所有するということは、さまざまな思惑が入り乱れています。しかしその根底にあるのは、「美術品への愛」ではないかと思うのです。

絵画は「本物を持つこと」に
価値がある

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かつて「日本人はハードにはお金をかけるが、ソフトにはお金をかけない」と言われた時代がありました。家は立派なのに、家具や調度品はお構いなし…といった感じです。

私は人の家に招かれて、センスの良い家具、おしゃれな絨毯やカーテンでコーディネートされた部屋に通されると、そこに住む人の豊かな人間性や気品を感じて、憧れを抱くことがあります。さらにそこにセンスの良い美術品があったりすると、その方の知性や教養が垣間見えるようで、もっと話をしてみたいと思います。

私は美術コレクションを見れば、持ち主の人柄が分かると思っています。外部の情報に惑わされて、有名な作家の作品や、値上がりするといわれた作品ばかり集めていると、本来最も重視しなければならない芸術的価値を見落としてしまい、最終的に本人の思惑とは違った価値の低いものになってしまいます。美術品は確かに値上がりも期待できますが、それを目的に集め始めると、往々にして期待を裏切られるものです。

というのも、単純に価格だけで見れば、値上がりするものもあれば、値下がりするものもあるからです。絵画は、取り巻く経済状況によっても影響を受けるため、画商といえども10年後に値上がりしているかどうかを確実に見抜くことはできないのです。

だとするならば、不確実な情報に振り回されるより、本当に自分の好きな作品を買うほうが良いのではないでしょうか? 無垢な心で買い求めたものこそが、その人にとっての「本物」であり、本当に価値があるものとなるのです。

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