人生の最期に口にした「忘れじのミルクシェイク」

「もし人生の最期が近づいていて1つだけ願いを叶えられるとしたら、どんな事を願いますか?」

想像してみてください。大きなことでも小さなことでも何でも構わないので。ただ1つ意識してほしいのは、あなたにとってそれが最後の願いだということ。

アメリカのクリーブランド出身のEmily Pomeranz(50)さんの場合、それは意外にも育ってきた土地を思い出させてくれるある飲み物でした。

あのミルクシェイクを
もう一度だけ飲みたい

Emilyさんが最後の願いを言うことになった理由。

膵臓がんを患い闘病するも、なす術なくバージニア州のホスピスで人生の残りの時間を静かに過ごしていたからです。そんな折、高校時代の友人Sam Kleinさんが見舞いに訪れました。

少しでも元気にしてあげたい、「何か欲しいものはある?」と尋ねたSamさん。最初は地元野球チームの帽子が欲しい、なんていうやりとりをしていたものの、ある日「Tommy'sのモカミルクシェイクが飲みたい」とポツリ。きっとEmliyさんは、自力ではもうクリーブランドへ戻れないと悟っていたのでしょう。

Tommy'sとは、クリーブランドの人たちに愛されている地元のレストランだそう。美味しいご飯とミルクシェイクが名物。でも、ここである重大な問題が…。

移動距離600キロ
やさしさを運ぶ大作戦

友人の願いを叶えてあげたい気持ちは山々。ただ、Samさんが頭を悩ませたのは、レストランからホスピスまで375マイル(約600km)の距離の壁。1人では解決できないこの問題、まずはTommy'sに直接問い合わせをして、打開策を探ることに。すると数日後一本の電話がSamさんの元に。

受話器の向こうで話す相手はレストランのオーナーでした。なんとかしてEmilyさんの元へと、モカミルクシェイクが届くように約束をすると、運送会社のオフィスを訪れるなどして飲み物を運ぶ手配を買って出てくれたのです。

そうして…。

忘れじのミルクシェイク、まさか届くと思っていなかったEmilyさんは大喜びで記念撮影。

飲みながら子ども時代を思い出したのでしょうか。それとも幸せな気分にひたり、ほっと安心できたのでしょうか、それは彼女にしかわかりません。

こうして、Emilyさんは息を引きとりました。
7月末の出来事です。

人生最期に見せた写真の中の輝く笑顔。たかがミルクシェイク、されどミルクシェイク。彼女の切なる願いに一生懸命になってくれた人たちの優しさがとけ込んだ一杯は、私たちに本当に大切なことはなにかを、教えられた気がします。

Licensed material used with permission by Sam Klein
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。