思いっきり前向きになりたいなら、私たちは熊本へ行くといいらしい。

毎日それぞれの日常を頑張っている友人と「久しぶりに、ゆっくりどこかに行きたいねぇ」なんて話がが出るけれど、休みの予定や本当に行きたい場所が合わなかったりと、何度流れてしまったか分からない。大人になるってそういうものだと思っていたけれど、今度こそちゃんと、ふたりの時間を提案してみようと思う。

困難を乗り越え
パワーみなぎる熊本へ

熊本地震のあと、「熊本」というワードをよく見るようになったのは気のせいではないはず。困難をきっかけに改めて注目を集めている熊本の話題は、SNSを通じて私たちの元に日々届いてきている。熊本の人たちにとっては“当たり前”の営みも、よそから見るととても活気づいて見える。

毎日を全力で、慌ただしく過ごすわたしたち。つい「温泉でぼーっと…」というプランを考えがちだけど、たまにはこんな風にパワーチャージする旅なんて、どうだろう?

伝説的ショップで
意志ある仕事に触れる

Photo by PERMANENT MODERN

ファッションに少しでも興味があるなら、一度は行ってみたい“伝説的ショップ”が、実は熊本にはある。

「セレクトショップの原型をつくった」とも言われる『パーマネントモダン』は、目の肥えたオシャレな大人たちが集まる場所。オーナーの有田正博さんが、まだ「セレクトショップ」という概念がなかった1976年に立ち上げたこの店には、40年経った今でも、全国から業界人が足繁く通うのだという。

Photo by PERMANENT MODERN

有田さんのファッションに対する圧倒的な熱量によって、熊本には東京のどこよりも早く流行が発信されていた、と当時を知る人達は語る。当の本人は「何にも考えてないんだよ、とにかく好きで、夢中でやってただけ」と笑うが、一方で「その熱量は今でも全く変わってない。扱うモノそのものは変わっているけど、いつだって今の時代を生きて、自分の感覚と提案をアップデートし続けているよ」とも。

今でこそ「好きを仕事に」という風潮があるが、それは正しかったのだと、40年も前からやり続けている人が証明してくれている。その姿を見れば、日々の仕事への向き合い方も、変わってきそうだ。

東京出身のオーナーが淹れる
チャレンジングな1杯を味わう

Photo by And Coffee Roasters

熊本城下の繁華街を北上し、表通りを一本入ったところにあるコーヒーショップ『And Coffee Roasters』のロースター兼オーナーの山根さんは、実は東京出身。まだ熊本ではめずらしかったロースター併設のコーヒーショップを広めるべく、この土地に降り立った。親戚がいるわけでもなく、自分の足で歩いて見つけた熊本。海外経験の中で感じた「ローカルタウンの面白さ」を、ここなら感じられると思ったそう。

Photo by And Coffee Roasters

店内で挽く豆はもちろん、世界中から選びぬいた焙煎豆も用意されている。味も全国から買い求められる程の折り紙つきだ。もちろん、地元からの信頼も厚い。

「熊本に来て本当に良かったと、震災の後、尚のこと思いましたね。熊本の人たちには、顔を知っている人のところでお金を使おうとするマインドがあるんですよ。この支えがあったから、今でもここでお店を続けられています」と山根さんは語ってくれた。「そんな街の人の空気感を感じてもらうだけで、きっと熊本のことを気に入ってもらえるんじゃないかな」

“産地の料理人”が手がけた
季節のイタリアンで
土地のエネルギーをもらう

Photo by リストランテ・ミヤモト

せっかく熊本まで来たのだから、口にするものも「その土地のもの」にこだわりたい。友人との気兼ねない夕食には、辛島町のイタリアン『リストランテ・ミヤモト』を予約しよう。

Photo by リストランテ・ミヤモト

オーナーシェフの宮本さんは、自身を“産地の料理人”と呼んでいる。

「僕の専門はイタリアンだけど、イタリア料理って本当は無いんですよ。ミラノやフィレンツェなど、郷土料理の集合体なんです。イタリアで修行していたときに、そういった郷土の素材や味を追求することの面白さを知ったから、僕は熊本の食材にこだわるんだよね」

宮本さん曰く、熊本は海抜0mから700mまで幅広い土地で農業ができるため、1年を通して様々な食材が手に入る、とても豊かな土地なのだそう。そんな県産食材をふんだんに使う料理に、エネルギーをもらわない訳がない。

熊本の街を思いっきり楽しむなら
宿はこのホテルで

今回の旅のために用意したいのが、『三井ガーデンホテル熊本』。ローカルの旅館でゆっくりするのもいいけれど、夜遅くまでたっぷり街を楽しみたいなら、こうした街の中のホテルが一番なのだ。繁華街からも徒歩圏内。熊本のコンパクトな街を最大限満喫するのに、ここを起点にするのが丁度いい。

館内は2017年4月にリニューアルオープンしたばかりという気持ちよさ。熊本駅についてから、街に向かう道すがら市電に乗って荷物を預けに行ってもいい。

せっかく熊本に行くのだから、あのくまモン®に会えるお部屋に泊まる楽しみをとっておくのもいいかもしれない。

朝になれば、朝食ビュッフェが待っている。全国の『三井ガーデンホテルズ』が力を入れてる「楽しみになる朝食」には、それぞれの地域の魅力が詰め込まれている。

熊本の人気メニューは、だご(だんご)汁・ 南関あげ入り馬すき・いきなり団子といったご当地ラインナップだそう。白いお米は熊本県産ヒノヒカリ、熊本で穫れたばかりのお野菜も、もちろんたっぷり用意されている。朝からまた、熊本のパワーをフルチャージできそうだ。

明治7年創業。
時代を越えて愛される景観と場所に
会いに行く

Photo by 長崎次郎書店

熊本城の城下町に店舗をかまえる長崎次郎書店は、明治7年創業。言わずもがな、熊本最古級の本屋さんだ。一度は店をたたんだが、歴史が色づく書店を残そうと、外観や屋号はそのままに若い世代の社長が再開に尽力したそう。

「やっぱりこの地で長く愛されてきた店なので、地域の皆さんのために、文化の発信地として守っていかなくてはと思って」と、長﨑さん。ギャラリーを併設した書店では、丁寧に選ばれた雑貨やお菓子も売られていて、お土産を買うにも丁度いい。ホテルから市電に乗って西に向かえば、正面からこの建物が迎えてくれるはずだ。

「長く愛される仕事とは」ということを考える時間は、月曜日から仕事に向かう背中を、優しく押してくれる気がする。

前向きで情熱的な力を
胸いっぱいに吸い込んで

どんな励ましよりも、気の利いたプレゼントよりも、互いに忙しい時間の合間を縫って共にすごす時間には敵わない。ただ力を抜きに行くのではなく、二人でおもいっきりパワーチャージする旅が、毎日を必死に頑張る私たちにはぴったりだと思う。

店主たちが教えてくれた熊本の魅力は、とにかく前向きで情熱的。都会の生活ですり減ってきたな…と感じたときには、真っ先に友人を誘って、熊本に行こう。