当たらないほうが良い占いって、なーんだ?

絶好調だった人も、イマイチだった人も、新年の運勢が気になります。わたしは編集者・ライターですが、占いも本格的にやるので、この話題には敏感。でも考えてみてください、占いって当たるほうが良いとされていますが、もし悪い結果が出たら…? そう、世の中には当たらないほうが良い占いもあるのです!

おかゆに生えた“カビ”が
吉凶を知らせる!?

それは、おかゆを使った占い。「粥占(かゆうら)」などと呼ばれています。日本全国で見られ、年明けの1月15~3月15日前後に行われているこのおかゆ占いでは、その年に火事や水難、地震などの自然災害が起こりそうかどうかがわかってしまうのです。

 

米どころの九州北部は、おかゆ占い神事が盛んです。おかゆ占いで有名な佐賀の海童神社の神主さんに聞いてみました。

「こちらでは、正月にお供えしたお米を2月15日に炊いて、本殿の神様の前に置き、1ヶ月後の3月15日に、おかゆに生えたカビの様子で1年間の出来事を予測しています。

秘伝なので詳しくは伝えられませんが、読み取れた災害など、主なものを3つぐらいお伝えしています」

 

過去の記録写真と占い結果はこちら。

 

【平成27年の占い結果】

写真提供:海童神社

「全体的には“吉”、穏やかな一年となりそう。火事や事故などの災難は少ない。ただし大雨や水害などが見えるので注意が必要。農業・漁業はともに“並み”と見える(海童神社)」

 

【平成28年の占い結果】

写真提供:海童神社

「全体的には“やや悪し”、騒がしい一年となりそう。火事や自然災害も見える。農業・漁業ともに“やや悪し”と見える(海童神社)」

 

わたしたち俗人にはわかりませんが、神主さんには、このようなおかゆの様子からその年の災害などが読み取れてしまうそうです。

おかゆ占いにも
さまざまな手法がある

面白いのは、神社によってそれぞれ手法が異なるところ。なんでも、

 

・煮えたおかゆの中に棒を入れてかき回し、棒についた米粒の数で占う。

・細い竹管などを米などとともに鍋釜で煮て、炊いた後に竹管を割り中の粒で占う。

・おかゆを数日間放置して、カビの生え具合で占う。

 

などがあるようです。なんとも呪術めいて西洋の魔女のようですが、日本の神主さんも不思議な儀式をしているんですね。前述の海童神社の神主さんに「どうやって読み解くんですか?」と聞くと、「代々伝わる秘伝がありますが、詳しくは教えられません」というお返事。ごもっともです…。おそらくカビの色や大きさ、どこにできたかなどで吉凶を判定しているのでしょう。神秘的で知的好奇心がくすぐられます。

なぜ「おかゆ」なのか?
それが問題だ

写真提供:みやき町観光協会

何しろ歴史が古いので詳しいことはわかりませんが、ある時期におかゆ占いが流行し、特に九州には深く根づいたようです。「日本三大粥祭」にも数えられる、佐賀の千栗(ちりく)八幡宮では、おかゆを入れた器に箸を十字に渡し、おかゆの表面を地元の地域に見立て、どこで何が起こるかを読み解いているそうです。前述の海童神社もおおむね同様。そのほか長野の諏訪大社や、京都の出雲大神宮、大阪の枚岡神社などでおかゆ占いが行われています。

 

ところでなぜ「おかゆ」なのでしょうか? その答えはわかりませんが、お米やおかゆは古来より聖なるものとして扱われていたため、霊力が宿るとされていたからかもしれません。でも、神聖な気持ちで神前におかゆを供えれば、神様からのメッセージを受け取れそうな気がします。おかゆ以外にも、お餅を使った占いが千葉の茂侶神社には伝承されています。

当たるからすごいんじゃない。
それは占いの本質

でも、徳の高い神主さんがおかゆ占いで起こりそうな災害を読み取っても、自然は人知をはるかに超えた存在だから避けることはできません。それでも、占いによって事前に知り被害を最小限に抑える備えはできます

 

これって、本当に占いの本質です。たとえば、「2018年は仕事で苦労しそう」という占いの結果を得たときなどは、「ああ、今年は守りに徹しよう。新規事業を考えていたけど、今年は準備期間と考えて、来年からスタートすればいいか!」と、運勢の流れにさからわない人生計画が立てられます

 

日本に春・夏・秋・冬があるように、人の運勢にも四季があります。いいときがあれば悪いときもある。占いってじつは、事前に予測して大きな困難を小さくするためにあるものなんです!

写真提供:みやき町観光協会
取材協力:海童神社、みやき町観光協会
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