伝統工芸品で異例の1400万円を集めた「Haori Cup」

2015年に、アメリカのクラウドファンディング「Kickstarter」で、(当時のレートで)1400万円もの資金調達に成功した日本のカップがある。しかも、伝統工芸分野で。

・・・気になる。

“使いたい欲”を掻き立てたのは。

そのカップは「Haori Cup」と言うんだけれど、デザインがステキなのは大前提。和洋問わず、どんな空間でも様になる感じは一旦横においておくとして。

まず、この軽さ。

左が「Haori Cup」。右が同容量(7-8分目まで入れると180cc)の一般的な薄いガラスカップ。しかも「Haori Cup」はスリーブまで入れて、ご覧のとおり。

 

そして、紙のスリーブにはない満足度。

紙のスリーブでも充分熱さ・冷たさから手を守ってくれるんだけど、国産杉は中の飲み物の温度を保ってくれる。そのうえ、多少の結露であれば吸収してくれる。フリーカップだから、中に入れるのは何でもいいらしいけど・・・。

 

木を感じたいなら、白湯が◎

熱々のままカップに注ぐと、熱がスリーブにじんわり伝わって、ほんのり杉の香りを楽しむことができるんだとか。

正体は
波佐見焼×博多曲物

長崎県の「波佐見焼」と福岡県の「博多曲物」。「Haori Cup」には、2つの伝統工芸が活きている。

「波佐見焼」は、薄造りの白磁や青磁を得意とする。写真を見ていただくとわかるように、光にかざすと指が透けるほど薄い磁器を量産できる技術力をもっている。

でも、薄造りは熱をダイレクトに伝えやすい。そこで考えられたのが、熱伝導率が低い国産杉を原材料とする博多曲物とのコラボだったのだ。

博多曲物を救う?

冒頭の1400万円が集まった話にもどす。

「Haori Cup」のプロジェクト責任者・奈須田さんが、まず、アメリカの「Kickstarter」でチャレンジしたのには理由があった。ひとつは「Haori Cup」が、世界中の人からほしいと思ってもらえるような“魅力あるプロダクト”かどうかを確認するため。

そしてもうひとつ。ここはおもに博多曲物にかかってくるのだが、量産時の課題を洗いだすため。博多曲物は明治初期から衰退していっていて、現在、残っている工房はわずか2軒のみに。プロジェクトでまとまった数を受注し、つくりはじめると、博多曲物の量産性は想像していた以上に課題が多かったという。見直し・改善の目処がたつまでに、1年半がかかったとか。

「Kickstarter」でのプロジェクトがひと段落し、次は国内。「Haori Cup」はもちろん、第2弾のプロジェクトを進めるために「博多曲物研究室」が立ち上げられた。ここでは、製造の現場から商品PRまで一貫して関わることで、博多曲物を少人数でも続けていけるような体制づくりを目指していくという。そして、クラウドファンディングサイト「Makuake」で、すでに目標金額を達成していたりする。「Haori Cup」をはじめ、博多曲物の今後の展開が楽しみだ。

 

あ、「Haori Cup」のHaoriは羽織。波佐見焼のうつわが曲物の羽織ものを着ているように見えるところからきている。ちゃんと、和紋つき。合わせは和装と同じ「右前」だ。

Licensed material used with permission by Makuake
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。