岐阜・養老郡のアートミュージアム「養老天命反転地」は、怖いけど快感
アートってよくわからなくて難しい…と、頭で考えるよりも五感をフルに働かせて感じる。
体験型の巨大なアート作品が、岐阜県養老郡にあります。
失われる平衡感覚
岐阜で奇想天外なアートを「体験」
「楕円形のフィールド」と、「極限で似るものの家」と名付けられた2つのメインパビリオンで構成される「養老天命反転地」。作品のなかへ一歩足を踏み入れると、わたしたちの平衡感覚はおもしろいほどに揺さぶられます。
養老山脈をバックにすり鉢状に広がるのが「楕円形のフィールド」です。まっすぐ歩くことさえままならないのは、すべてが傾斜でできていて、「垂直」「平行」がほぼ排除されているから。
「あたりまえの身体感覚が失われたとき、わたしたちは世界をどう知覚するのか?」
作者である現代美術家・荒川修作氏と、パートナーである詩人マドリン・ギンズ氏からの問い。
自分の存在までをも疑わせる
「意外性」との遭遇
「意外性との遭遇で固定概念を覆す」という作品のテーマがわかりやすく体験できるのが、もうひとつのメインパビリオン「極限で似るものの家」です。
屋根は岐阜県の形、地面には岐阜県と隣接県の地図が描かれたこの建物。
外観だけでなく、中に入ると「意外性」が不意にわたしたちを襲ってきます。
迷路のように入り組んだ暗い家の中には、コンロやソファ、家具、机など様々な家具が散りばめられています。
壁を貫通するように配置されたものや、逆さに置かれたものも。
これらのものは、あるべきはずの場所、あるべきはずの姿、というわたしたちの世界に対する固定概念を、見事なまでに覆すのです。
さらに上を見上げると、天井にも家具が “置かれて” います! 地上と天井が双子構造になっているのです。一見、鏡の世界が広がっているように感じますが、そこに映っていないのは自分だけ。
「自分がいまここに存在していること自体を疑う」
そんな感覚に陥ります。
作者も予想しなかった
「新しい」楽しみ方
今「養老天命反転地」は、これまでになかった新しい視点で話題を呼んでいます。それが、写真を使ったトリックアートのような楽しみ方。
傾斜を利用して重力に逆らってみたり。
双子構造を利用して、ちょっと不思議な世界観をつくりだしてみたり。
24色の色鮮やかな「養老天命反転地記念館」は、どこを切り取っても絵になります。
「近年のSNSやメディアによる紹介の反響は、とても大きい。20年以上前になる1995年の開館当初にはなかった楽しみ方で、作者の荒川修作とマドリン・ギンズも予想もしなかった広がりに喜んでいるのではないでしょうか」
と職員さん。
怖いけど、快感
誰もが産まれた時点で死に向かうという「天命(宿命)」を「反転(覆す)」ことを使命として活動し続けてきた、荒川氏とギンズ氏の30年間に渡る研究の集大成である「死なないため」のテーマパーク。
“わかりにくさ” を “わかりやすく” 体験することができる感覚は、現実を疑うというある種の恐怖である一方、快感にも感じられます。
SNS映えだけではない、哲学的で、奇想天外な世界を、大人のみなさんこそ体験してみてはいかがでしょうか?
「養老天命反転地」
住所:岐阜県養老郡養老町高林1298-2
営業時間:午前9時~午後5時(入場は4時30分まで)
休園日:月曜日(祝日の場合はその翌日)、年末年始(12/29~1/3)
入場料:一般/750円 高校生/500円 小・中学生/300円