「地球上最後の場所」からのSOS

気づいてくれただろうか。

上の写真、森の中に浮かぶ「SOS」の文字に。

ここは、インドネシア・スマトラ島。

豊かな熱帯雨林が広がり、ゾウやサイ、トラやオランウータンが共存できる「地球上最後の場所」といわれるこの島から、いま世界へ向けて送られる救助信号とは——。

悲劇は、起こるべくして起こった。

半世紀以上もの間、この島では違法な森林伐採が続けられてきたという。

目的は、主に食品や化粧品に使用されるパーム油の生産。

近年ではバイオ燃料の用途もあるなど、もっとも経済的かつ多目的な原材料のひとつとして認知されている。

その生産量で世界をリードしているのが、他でもないインドネシア。

パーム油生産は、この国の経済成長の要因となっている一方で、森林の面積は全盛期から半減。スマトラは「世界一森林破壊が速い」と言われる存在になってしまった。

こうして、人間が自らの利益を追求したあまり、実に500種以上を誇る世界屈指の生物多様性が危機に直面しているというわけだ。

とりわけ深刻なのが、スマトラオランウータン。残りは14,600匹程度と見込まれており、絶滅危惧種にも指定された。

そうした状況にも関わらず、いまなお違法な伐採は続いている。

加えて、山焼きや交通インフラの整備などもあり、スマトラの森は減少の一途を辿っているのだ。

この問題解決へ向けて動き出したのが、化粧品ブランド「LUSH」。

2008年以降、自社のサプライチェーンからパーム油を排除する活動を開始。石けん素地のパーム油不使用を実現した。

いまでも新たな原材料調達の際には、パーム油が使用されていないものを採用するなど、毅然とした態度を取り続けている。

さらに、彼らの取り組みはそれだけにとどまらない。

一化粧品ブランドが「森の再生」を目指す。

写真は、LUSHが昨日から発売を開始した「スマトラ シャンプーバー」。

同ブランドならではの固形型シャンプーで、4月19日まで実施される「#SOSsumatra キャンペーン」のチャリティー商品だ。

マカロンのようなキュートな見た目には似つかわしくない三文字が、事の重大さを一層強く印象づけている気がする。

消費税を除く売上の全額が、森林保護団体・Sumatran Orangutan Societyへ寄付され、かつて豊かな熱帯雨林が広がっていた50ヘクタール(東京ドーム約10個分)の土地購入に充てられるという。

ただし、寄付をして終わりというわけではない。

原材料もそこで育てると同時に、持続的に現地コミュニティの人々と付き合い、一緒になって元の生態系が整う森林に再生させることこそがゴールなのだ。

……それにしても、東京ドーム約10個分。

リゾート開発のデベロッパーが買うというのなら話は分かる。でも、購入をサポートするのは、一化粧品ブランドのLUSHである。

この数字は、今後もスマトラの自然と継続的に向き合っていくのだという相当な覚悟を雄弁に物語る。

小さな小さなシャンプーバーには、特大の想いが込められているのだ。

先月、ロンドンで開催された「LUSH SUMMIT 2018」のワンシーン。スマトラ島の森林保全プロジェクトについてパネルディスカッションが行われた。
「スマトラ シャンプーバー」は日本を含む8ヵ国で約15,000個が用意される。

たしかにここまで述べてきたのは、遠く離れたインドネシアでの出来事。

しかし、ここ日本で暮らす僕たちが日常的に消費しているものの背後にこうした問題が潜んでいることは、看過すべきではないはず。

決して「パーム油使用品を排除しよう!」などと乱暴な意見を言いたいわけではない。

食品や化粧品を中心に、ここまでパーム油が広まっている現代。そんな青写真は描けない。

消費する、しないは個人の自由。大切なことは、そこに背景を「知ろうとする」前向きな意思があるかどうかではないだろうか。

そういう意味で僕は、このLUSHのチャレンジを一人でも多くの人に届けたい。

一度話を聞いただけではすぐに忘れてしまう難しい社会問題も、シャンプーバーという形あるもののおかげで、見るたびに思い出すことができる。

それが直接的な支援ではないにせよ、まず「考える」という行為自体が立派なアクションだと思うから。

Top Photo by Save Our Souls installation by Ernest Zacharevic
Licensed material used with permission by LUSH
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。