ペプシコ、16.5億ドルの買収劇「腸活ソーダ」で若者市場席巻なるか?
健康志向の高まりとともに、特定の成分や効果に特化した「機能性飲料」市場が活況を呈している。従来のコーラやサイダーに代わり、健康とおいしさを両立させた新たな選択肢を求める消費者が増えている証拠だ。
それはアメリカでも同様のようで、AP通信が報じたところによると、米マーケティングリサーチ会社「NielsenIQ」のデータでは、機能性飲料市場規模は2020年3月から2024年3月の間に54%増加し、92億ドルに達したという。
「現代のソーダ」を掲げ
急成長を遂げる「Poppi」
そんななか、アメリカの飲料大手「ペプシコ」が、プレバイオティックソーダのスタートアップ企業「Poppi(ポッピ)」を16億5000万ドルで買収したというニュースは、業界に大きな衝撃を与えた。
なぜ、ペプシコは巨額を投じてまで「Poppi」買収に動いたのか? そこには、従来の飲料メーカーとは一線を画すPoppi独自の戦略があった。
Poppiは、Z世代をターゲットに、カラフルなパッケージデザインや、TikTokなどのSNSを活用したマーケティング戦略で急成長を遂げている。一例を挙げれば、「スーパーボウル」の際に人気TikTokerに自動販売機を丸ごとプレゼントするという大胆なキャンペーンを展開し、大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。
Z世代を引き付けるよう設計された、こうした鮮烈でポップなブランディングアプローチをPoppiの創業者Allison Ellsworth氏は、「Forbes」の取材に対し、以下のように語った。
「過去5年間、私たちはバイヤーや小売業者と協力して、まったく新しいカテゴリーを定義してきました。それが私たちが呼ぶ『現代のソーダ』です。これは店内の新しいカテゴリー全体の目的地です」。
「腸活ブーム」が
飲料業界の勢力図を塗り替える
ペプシコによる今回の買収劇、健康意識の高まりを背景とした腸活ブームが、従来の飲料業界の勢力図を塗り替えつつあることを象徴している。
従来のソーダは、糖分や人工甘味料の多さが健康上の懸念材料とされてきた。いっぽう、「腸活」を意識する消費者は、腸内環境を整え、健康を促進する効果が期待できるプロバイオティクスに着目している。
Poppi買収により、ペプシコは14種類におよぶカラフルで低糖質、そしてプレバイオティクスが豊富なソーダを手に入れた。これは、巨大飲料メーカーであるペプシコが、変化する消費者のニーズに応え、新たな成長戦略を模索している証と言えるだろう。
ちなみに、競合他社の一番手「コカ・コーラ」社も、2月にプロバイオティック・ソーダブランド「Simply pop」をリリースしたばかり。今後のソーダ市場は、プロバイオティクスを中心に回っていくはずだ。
消費者の健康意識の高まりと、それに伴う新たな市場の創出。そして、従来の業界の常識にとらわれず、時代の変化を捉えた企業だけが、未来の市場で勝ち残ることができるという厳しい現実を突きつけていると言えるだろう。