夏のおとずれを感じる「あの瞬間」の名前

 

たとえば、仕事を終えてオフィスの外に出たとき。夜がくる直前の薄明るい空と、つかれた身体に吹く、生暖かい風。

夏のおとずれを実感させる「あの瞬間」を、なんと呼ぶのだろう? 

「夕暮れ時」の、名前を知る

 

黄昏(たそがれ)

夕暮れの、あたりが薄暗くなってくる頃。その中に、わずかな夕焼けの「赤色」が残っている時間をさす言葉。すこしずつ終わりに近づいていく人の一生を、「人生の黄昏」なんて言ったりもするみたい。たそがれ、たそがれ。なんだか、静かにつぶやきたくなってしまう言葉ですよね。

 

夕映え(ゆうばえ)

夕日の光を受け、まわりの物が美しく輝いてみえることをこのように言うのだそう。「TABI LABO」のオフィスから東のほうを見ると、タワーマンションの窓が黄金色に輝いて見えるときがあります。こんなふうに記事を書いている合間に、ふとひとやすみしたくて出た外階段から見える、あの夕映えの景色が大好きなのです。

 

茜(あかね)

もともとは、山に生えるアカネ科の多年生つる草の名前。すこしくすんだ赤色の染料として使われるそう。その色から、夕日で赤く染まった空や雲を「茜空」、「茜雲」と呼びます。たとえば夕暮れ前、となりを歩く愛おしい人が日に照らされて赤く染まっていたなら、「茜さす君」なんて呼ぶみたいですよ。

 

夕焼け(ゆうやけ)

これはもう、よく使われる言葉ですよね。日の入りのときに、西方の地平線に近い空が、燃えるような赤紅色に染まる現象のこと。空気中の水蒸気が多くなる梅雨の時期は、1年の中でもとくに夕焼けが鮮やかに見られます。あまりに美しいその光景から、「梅雨夕焼け」なんていう季語もあるみたい。

 

薄明(はくめい)

太陽が地平線に沈んでも、急に真っ暗になるわけではありません。しばらくは薄明るさが残りますよね。このような空を、文字のとおりの言葉で呼ぶのだそうです。冒頭で書いた、夏のおとずれを感じる「あの瞬間」は、この時間にやってくることが多いかもしれません。

 

『空の名前』著:高橋健司(角川書店)

美しい風景は大自然の中だけでなく、見上げた空に、日の光の中に、そして降り注ぐ雨の中にもある。天候や季節を表す豊かな日本語を300点余りの写真とともにまとめたフォトミュージアム。光琳社出版1992年刊の新装版。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。