わたしは、これを知って「雨の日が好き」になりました。
3月がはじまりました。
今日は、全国的に「雨」が降ったところが多いみたいで。まだまだ寒く、せっかく新しい月になったというのに、と思う人もいるかもしれません。
でも「3月のはじめに雨が降る」って、じつはとても素敵なことだと思うんです。随筆『徒然草』でも語られるように、古来から日本の人々は、花や植物の芽吹きをうながす春の雨を、どこか高揚感をもって眺めてきたといいます。
寒気がすこしずつほぐれていく春先の、やわらかな雨。降る時期や、降りかたによってそれぞれに名前がつけられていること、知っていましたか?
「春の雨」の、名前を呼ぶとき。
春雨(しゅんう)
冬が明けて、心身ともに弾むころに降る雨のこと。まだ冬が明けたとは言えないくらいに寒い日々ですが、すこしずつ、日暮れの時間も遅くなっています。この春雨が降るのも、もうあと少し。
甘雨(かんう)
草木にやわらかく降る、けぶるような春の雨のこと。農作業のはじまりに降るこの雨は、穀物ばかりでなく野の草花にもそそぎ、その成長をたすけます。春の雨景色には、どこかゆったりとした「甘さ」があるということから、こんな名前がついたのだそう。
紅雨(こうう)
雨にはもちろん色がないけれど、ときに花粉や黄砂を含んで色味をつけ、かすかに紅色を帯びたような雨が降ることがあるのだとか。花々にやさしく降りそそぐ、春の雨景のこともこのように呼ぶんだって。
雪解雨(ゆきげあめ)
雪をとかす春の雨。北国でも、この雨が降れば春はもうすぐ。田畑を目覚めさせ、木々を芽吹かせ、花に色をつけ、人々によろこばれる「嬉しい雨」と言われています。
菜花雨(さいかう)
菜の花の頃に、花が咲くのを急き立てるように、しとしとと降りつづくあたたかい雨。この雨がやむ頃には、野には一面、黄色い花でいっぱいになるそう。
“雨の日を3倍に楽しむ本”。世界中で最も「雨」の好きな人種、それは日本人。短歌をはじめ、俳句、小説、民謡、はては歌謡曲まで、雨をテーマにしたものは数え切れない。本書では、古来からの「雨の名前」を、詩と短文・写真で紹介。