群馬で大切な人を想うなら、嬬恋の絶景の中で

あなたにとって、一番大切な人は誰ですか?

遠くで暮らす両親や、いつも側にいてくれる家族、好きな人……。あるいは、愛犬だったり自分だったり。いろいろあると思います。そんな大切な人を想うための場所が、群馬県の嬬恋村(つまごいむら)にありました。

その場所というのは、ずばりキャベツ畑の中。嬬恋村の風景は、見渡す限りキャベツ、キャベツ、キャベツ!

(首都圏に出回っているキャベツのおよそ8割が嬬恋産なんだそうです。)

で、なんでここが
「大切な人を想う場所」?

© 2018 Etsu Moriyama

それは、まず、こんな伝説があるからです。

むか〜しむかし、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東国の征伐のために海を渡っていたところ、嵐がきてしまいます。一緒に船に乗っていた奥さんは、嵐は海神が怒っているためだと思い「私の命に代えて、海神の怒りを鎮めましょう」と、海へ身を投げてしまいました。嵐は無事おさまるも、任務が残っていたヤマトタケルノミコトは、亡くなった奥さんを偲ぶ間もなく征伐へ向かわざるを得ませんでした。

その帰り道、いま嬬恋村がある場所で

「吾嬬者耶(あづまはや)」
=ああ、我が妻よ、恋しい〜

と叫んだのです。
嬬恋村は、世界で初めて「愛妻家宣言」がなされた場所。

ちなみに嬬恋村は群馬県の吾妻郡にあります。上のセリフは全部 、地名にかかっているんです。

嬬恋村は
愛妻家の聖地

© 2018 Etsu Moriyama

次に注目すべきが「日本愛妻家協会」です。
お察しのとおり、本部は嬬恋村。

妻というもっとも身近な赤の他人を大切にする人が増えると、世界はもう少し豊かで平和になるかもしれないね。

……いい。

こんなステキなキャッチコピーを掲げ、嬬恋村から、「愛妻家」というライフスタイルを全国、そして世界へ発信しています。あとは、愛妻家の保護育成も行なっています(笑)。

愛妻家の保護育成の一環で2006年から行われているのが「キャベツ畑の中心で妻に愛を叫ぶ」。通称キャベチューです。内容はもう、タイトルのまんま。年に一度、9月に、キャベツ畑の中にある「愛妻の丘」で、全国から集まった男性陣が一人ずつ愛を叫びます。

こんな風に(笑)。

© 2018 Etsu Moriyama
「つまごいパノラマライン 南ルート」から少し入ったところにある、浅間山×キャベツ畑のビューポイント

こちらは、嬬恋村役場の久保さん。
職業柄(?)、もちろん叫んだことがあるようで、せっかくなので、お気に入りの場所で再現していただきました!(※取材当日のコンディションがものすごく悪かったのはご愛嬌。曇天かつ、キャベツの植えつけが始まったばかりの6月上旬でした。)


ちなみに、「久保さんは愛妻家ですか?」という質問のこたえはこれ。

「僕ですか……!僕は愛妻家じゃないと思いますよ。僕がそうだと言っても妻はそうは言わないんじゃないかなあ。相手がどう思うかですからね」

もうこの時点で愛妻家確定だろうな、と思ったわけです。

ここまでくると、もはや絶景

© 2018 Etsu Moriyama
「つまごいパノラマライン 北ルート」沿いの風景

正直、心が洗われます。

今回撮影したキャベツの写真は、どれもカーナビで「つまごいパノラマライン」と入力してたどり着いた場所の周辺です。植えつけが始まったばかりだという6月上旬でさえ、広範囲にびっしりキャベツが植わっている場所がありました。スポット次第では満足感を味わえますが、一面緑の「The 絶景」的景色を見ることができるのは、6月下旬〜7月頃。それ以降は、だんだん収穫が始まるため、収穫前後の畑が混在するパッチワーク的風景を楽しめるそうです。

© 2018 Etsu Moriyama

畑の中にある道路標識にはこんな遊び心が!

© 2018 Etsu Moriyama
「愛妻の丘」付近で見つけた道路標識「愛妻家に注意」

村内各所で手にはいるドリンクもおもしろいです。飲んだら「愛してる」と叫びだすかもしれないミネラルウォーターや「愛妻ダー」とか。

© 2018 Etsu Moriyama
嬬恋村で採水されたミネラルウォーター「妻との渇きを潤す水」
© 2018 Etsu Moriyama
村内各愛妻スポットで手に入る、キャベツ酢入りの「愛妻ダー」


さすが、村そのものが「愛妻家の聖地」。ぜひ、各所に垣間見える世界観まで含めて、まるっと絶景を感じてほしいです。

想うも叫ぶも
気の向くままに

© 2018 Etsu Moriyama

先ほどキャベチュー開催の地としてご紹介した「愛妻の丘」は、嬬恋観光において絶対にはずせません。叫び台が設置されているほか、ちょっと小高い場所にあるので、山の麓まで広がるキャベツ畑を見渡すことができるんです。

とりあえず、形から。
得意じゃありませんが、せっかくきたので叫んでみます。

© 2018 Etsu Moriyama

叫ぶのが無理な人は、こうやって想いを馳せるなどでもいいかと思います。

© 2018 Etsu Moriyama


今回実際に叫び台にのぼってみて思いました。
あ、別に叫ぶ人も叫ばれる人も、誰でもいいのかなって(叫び叫ばれる内容が変なことじゃなければですが)。

実際にキャベチューでも、奥さんが旦那さんに対して愛を叫んだ事例が出てきたり、叫び叫ばれる対象の幅が少しずつ広がっているそうです。


そもそも、普段生活していて、気持ちいいくらい整った広大な緑(キャベツ)を目の当たりにする機会ってそうそうありません。嬬恋村を訪れる人は、非日常の景色を目の当たりにした結果、「心がクリアになる→自分の本心が見える」という連鎖を体感するのではないでしょうか。何が言いたいかというと、嬬恋村は、そもそもに、(愛を叫ぶための)心の整理をするのにもってこいの場所だと思いました。


「愛妻家の聖地」もいいけれど、嬬恋村は「一番大切な人を想う場所」。個人的には、こちらのほうで推していきたいと思います。

「愛妻の丘」(つまごいパノラマライン沿い)
住所:群馬県吾妻郡嬬恋村大字田代字大横平2000の内
※冬期間(12月上旬~4月上旬)閉鎖
HP:http://tsumatabi.com/spot/spot_7/

Top photo: © 2018 Etsu Moriyama
取材協力:群馬県、嬬恋村役場
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。