時代が静かにさせたモンスター「NSX」
〜音のないクルマ選び④〜


自分だけの静かな空間……。

こういう見方でクルマを選ぶ。エンジンとかメカ的なスペック、先進技術、金額などではなく。

スポーツカーも時代に即せば大人しくなる

静かさを求めるテーマでも、クルマを紹介するのにスポーツカーをピックアップしとかなくては、「ただ大人しいクルマなだけでしょ」と揶揄されてしまいます。

でも、今やハイブリッドな時代。スポーツカーといえど、静かで速い!おまけに燃費もいい!欧米のスーパースポーツカーが割り切って省いてきた箇所を一つひとつ拾い上げたのが、日本メーカーが手がけたこの一台なのかも。その名はホンダ「NSX」。

©HONDA

【ホンダ NSX】

フェラーリやランボルギーニのように、エンジンをスタートした瞬間に、モンスターが雄叫びをあげたような“爆音”でお出迎えするのと違い、ホンダ「NSX」は静寂の一言。

エンジンと併せて3つもモーターを搭載し、しめやかに静かながら、高速移動を可能としています。速度を上げれば20km/hほどからエンジンが始動。それでも、室内に迫力あるエキゾーストノートが響くわけでも無く、とにかく静か。なめらかに加速していく様はスーパースポーツ然としていながら、スマートそのものです。

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助手席に同じようなクルマ好きを乗せて、スピードを味わう。速度が上がればあがるほど、エンジン音にかき消されていくふたりの会話。これ、スポーツカーに於ける常識ですが、NSXに関しては起こりません。

個人の楽しみより、共有できる悦びがそこにはあるようで、和を重んじる日本的な仕上がりだと感じるのは、深読みしすぎでしょうか。

日本人が今スーパースポーツを造ったらどうなるのか?その答えが、時代に即したNSXという姿。こんなクルマをつくった日本という国が、誇りに思えてしまいます。

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本性はモンスター。正しい乗りこなしが肝心

このクルマは勘違いするくらい気持ちいいです。スーッとした走り出しから、あっという間のスピードアップ。大人しくしているようで、走りっぷりだけはどう猛なスポーツカーらしい速さ。それでいて、ハンドルの操作やドライバーの意思に同調し、期待どおりの挙動で反応する従順さ。

ゴジラというより、メカゴジラ。叫びもしないし、指令に対して言うことを聞いてくれるモンスターってところ。

でも、静かで快適だなって油断したままアクセルを踏んだりしてしまうと、スピードの向こうへ連れてかれてしまいます。静寂さや制御が「時代に即した」とあっても、やっぱりスポーツカー。扱いには十分注意して付き合いましょう。

Top image: © HONDA
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。