世界で注目を集めるCO2削減方法「カーボン・オフセット」とは?
ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなどでの取り組みが活発であり、日本国内でも民間での取組が拡がりつつある「カーボン・オフセット」。
今回は「カーボン・オフセット」の定義や国内外の事例、「カーボン・ニュートラル」との違いについて紹介していきます。
カーボン・オフセットとは?
カーボン・オフセットの定義
環境省によると「カーボン・オフセット」は以下のように定義されています。
カーボン・オフセットとは、日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方です。
CO2排出量の削減努力をしたうえで、それでも抑えられない部分をクレジット購入等で「相殺」する仕組みのこと。以下はカーボン・オフセットの流れです。
- 二酸化炭素の排出量を知る
- 削減努力、削減を促す取り組みを実施する
- 削減しきれない二酸化炭素を温室効果ガスの削減活動に資金を提供する(クレジットを購入する)ことでオフセット(相殺)する
カーボン・ニュートラルとの違い
「カーボン・オフセット」と「カーボン・ニュートラル」は用いられる場面によって、定義が曖昧になっており、混同しやすい概念です。
一般的にカーボン・オフセットは、削減努力をもって抑えられない排出量をクレジット購入等で相殺する「仕組み」のこと、またはそれに紐づく「削減目標」を指します。
一方カーボン・ニュートラルは、相殺後の「排出量をゼロにする」という厳密な「削減目標」のことを指します。カーボン・ニュートラルについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
▼関連記事▼
カーボン・オフセットの取り組み事例【国内】
それでは実際の取り組み事例をみてみましょう。ここでは国内の事例を紹介します。
HISの取り組み
HISでは、一般の旅行者がカーボン・オフセットに参加できるよう、環環境保全プロジェクトに寄付ができるサービスを提供しています。飛行区間ごとにどれくらいの二酸化炭素が排出されて、何口でどれくらいオフセットできるのかを確認することができます。個人が手軽にカーボン・オフセットに参加できるのが魅力のサービスですね。
京都市の取り組み
都道府県や市町村は、それぞれの環境保全活動によって生まれた二酸化炭素の削減量を地元企業にクレジットとして販売することで、オフセットを目指しています。京都府でも、市内の地域や商店街等コミュニティの省エネ活動などによって実現した二酸化炭素の削減量をクレジットとして認め、市内で行われるイベントの実施団体などに売却することで、カーボン・オフセットを目指しているそう。京都のサッカーチーム「京都サンガF.C.」もこの仕組みを利用して大会を実施しています。
カーボン・オフセットの取り組み事例【海外】
続いて、海外のカーボン・オフセットの事例を紹介します。
easy Jetの取り組み
イギリスの格安航空会社easy Jetは、自社が運行するすべてのフライトにおいて、植樹や森林破壊や再生可能エネルギーからの保護などのプロジェクトに投資することで、二酸化炭素の排出量をオフセットすることをコミットメントとして掲げています。この取り組みは、世界の大手航空会社において初めてカーボン・ニュートラルを実現した事例として話題となりました。
Air New Zealandの取り組み
環境先進国とも呼ばれるニュージーランドの航空会社Air New Zealandは「Fly Neutral」という取り組みを通して、乗客にカーボン・オフセットの機会を提供しています。これは、公式サイトでフライトの発着場所を入力すると、排出される二酸化炭素量が表示され、オフセットにかかる料金を支払いできるサービス。
Teslaの取り組み
米電気自動車メーカーTesla(テスラ)は、5四半期連続で黒字を達成。それには、他自動車メーカーへのクレジット(温室効果ガス排出権)の売却益が大きく寄与しています。10月21日に発表した第3四半期決算では、売上は87億7000万ドル(約9163億円)、純利益は過去最高益の3億3100万ドル(約346億円)、クレジットの売却収入は3億9700万ドル(約412億円)と報告されました。Teslaはクレジットの販売だけで、1年でおよそ1600億円もの膨大な利益を生み出していることになります。
カーボン・オフセットの問題点
メリットばかりに見えるカーボン・オフセットですが、企業や個人がオフセットに頼りすぎることで、当事者が二酸化炭素の削減努力を怠ることが問題視されています。
カーボン・オフセットはあくまでも、削減努力を行った上で取る選択肢ということを忘れてはいけません。
まとめ
投資をすることで環境保護に貢献できる仕組み「カーボン・オフセット」。しかし、カーボン・オフセットは免罪符ではありません。普段から地球に優しい行動を心がけたいものです。