「うまい棒」と飲む、最高のワイン。
ワインに合わせるアテは、小洒落た料理だけがすべてじゃない。
ラフに気取らずに、ハードルをもっともっと下げていけば、ワインに最適な駄菓子だって見つかるかもしれない……。
なんて考えだしたら、もう止まらない。
時代を超えて愛される駄菓子。ヘルシー至上主義のこの時代だって、細々と生き続けるキング・オブ・JUNK FOOD。まさか……なペアリングが存在するかもしれない。いや、あって欲しい!
ソムリエ吉川大智さんを緊急招集。ベストマッチンなスパークリングワインと駄菓子の組み合わせを探してみた。
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駄菓子さえ受け入れる
「泡」ならではの包容力
今回、ムリ言って企画に参加していただきありがとうございます。
いろんなペアリングをしてきましたけど、まさか、駄菓子と合わせる日が来るとは想像もしていませんでした(笑)
駄菓子って地域差こそあれど、誰でも一度は経験してきた味だと思うんです。今も当時のままっていう鉄板の駄菓子ばかりだったりしますし。
子どもの頃、本当によく食べましたよ。だいたい経験済みですね。ボクの幼少期は、「ミスターイトウ」のバタークッキーとか、チョコチップクッキーなんかもよく食べてた記憶があります。駄菓子じゃないんだろうけど、子どもでも手が出しやすい値段だった。
スパークリングワインとのペアリングなので、甘い系の駄菓子は控えめにしましたが、とにかくバラエティにこだわって駄菓子は用意しました。この時点で、どのワインにも合いそうだなっていう駄菓子はありますか?
「ビッグカツ」は赤でも白でもスパークリングでも、どれでも合いそうな気がします。「うまい棒」あたりもいけるんじゃないかな。
まずは、ペアリングのポイントというかロジックが当てはまるか、そこからチャレンジしてみましょうか。
<<ワインペアリングの5大要素>>
① ワインと食材の色味
② 味の濃さとワインの飲み口の重さ
③ 対称(相対する)の味
④ 味わいの香り
⑤ 産地で合わせる
ペアリングのベースとなる考え方は、果たして駄菓子に通用するのか。興味深い!
そうそう、今回用意させてもらったスパークリングはスペインのカヴァ。「ヌリア カヴァ ブリュット NV ボデガ ロペス モレナス」です。
初めて飲むカヴァですけどおいしい。いいですね。プライベートでも買って飲みたい。
カヴァって基本的にシャンパンと同じ瓶内二次発酵で作られるため、泡もちがいいんですよね。
カヴァには、わりとマルチパーパスにどんな料理とも相性よくいけちゃうイメージがあります。食を選ばないというか。スパークリングワインの持つ魅力ってなんでしょうか?
ひとつは、発泡性で辛口というのがポイントだと思います。餃子や唐揚げでもシャンパンが飲めちゃうのは、口内を泡でリセットしてくれるという効果もあるし。
もしかしたら、どの駄菓子も泡でいけちゃったりして。
フルコースで食べるときに、食前酒から前菜、メインと全部スパークリングで通せたりもしますからね。だからこのカヴァもかなりユーティリティなところがあると思います。
とくれば……「タラタラしてんじゃねえーよ」とかどうだろう? おおっ、わりと濃いめの味付けですねぇ。喉が乾く(笑)
塩味も強いし辛味もしっかりありますね。そこに泡が入ると口中をさっぱりさせてくれません? まあ、それだけだと塩っぱい系の駄菓子どれにも当てはまっちゃうか。
「餅太郎」のような揚げせんもフツーにいけちゃいますね。泡おそるべし。ただ、なんというかパンチに欠ける。
よく、ブルーチーズにハチミツを合わせて食べることがありますよね。あれって、しょっぱいチーズにハチミツの甘さを掛け合わせるという「対照のものを合わせる」ペアリングが成立するからおいしい。
この「ヌリア」も飲み込んだあとは果実味のあるフルーティな甘さを感じます。ならば、もう少ししょっぱい味との組み合わせの方が相性がいいかも。
「ラーメン屋さん太郎 とり味」、コイツはちょっとしょっぱいかなあ。たしかにスパークリングだと、どれでもそれなりに合っちゃいますね。最適解が難しい……。
そして、たどり着いた
泡と磯の香りのマッチング
「焼肉さん太郎」も濃いめの味が舌に残りますね。「ヌリア」の泡でも口の中をリセットできない。
ならば、こっちの方がいいかも。結構「うまい棒」シリーズはどれでもハマると思うんですよ。「のり塩味」とかどうですかね?
スペインじゃないけど、ナポリでピザの前に出てくる「ゼッポリーネ」みたいに泡と合っちゃったりして。
ほら、悪くないでしょ。カヴァとの相性。欲言えば、キンキンに冷やしているともっと合うかも。
こういう海苔フレーバーの味がバルにあっても不思議じゃないですね。
そもそも海産物系の料理とスパークリングの相性って、めちゃくちゃいいですからね。海苔と泡がいいんだろうな。
コクのある白ワインよりも、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランのようにちょっと若草っぽいというか、緑々しいフレッシュさが合いますからね。「ヌリア」の辛口なニュアンスもいいと思います。
同じ「のり塩味」でもポテトチップスのようでなく、みりんの甘味が主張しているあたりがマッチする理由?
たしかに、甘さがありますよね。子どものお菓子っていう感じ。ものすごくドライなシャンパンだったら合わないかもしれない。
「ヌリア」って少し舌先に甘さが残りません?ワイン業界ではよく“残糖感”なんて表現をしますが、果実味とはまた別の甘さの種類があるんですね。それがみりんの甘さにハマるのかも。
コーンスナックってしゃくしゃくした後、すぐに溶けていきますよね。ワインがそれをフレーバーと一緒に流してしまうのに、さすがに海苔だけは若干、口の中に残る。最後の最後、まだ口の中に残っている海苔に「ヌリア」の香りや味わいが乗っかってきてくれる感じがする。
いいじゃないですか!そういうのもペアリングですから。悪くない組み合わせなんだと思います。
ちなみにですが、「ヌリア」のような味わいのカヴァは本来だったらどういう料理に合わせるのがいいんでしょう?
チャレッロ、マカベオ、パレリャーダという3種のブドウ品種で構成された果実味のある辛口ですからね、前菜やサラダはもちろん、たとえばペペロンチーノみたいなパンチのある香りにもいいですよね。アヒージョや魚介を使った料理、フリットなんかもカヴァとの相性が抜群にいい。
結論づけちゃうようですが、そういう意味でいうと、駄菓子のなかでは「うまい棒 のり塩味」が必然的にマッチする。というところで、いかがでしょう。
「ヌリア カヴァ ブリュット NV ボデガ ロペス モレナス」に駄菓子を合わせるならば、「うまい棒 のり塩味」ということで。
はい、悪くない組み合わせだと思います。
ヌリア カヴァ ブリュット NV ボデガ ロペス モレナス
【生産地】スペイン / ペネデス
【品種】チャレッロ35%、マカベオ35%、パレリャーダ30%
【タイプ】辛口 スパークリング
【アルコール度数】11.5%
【価格】1500円前後
〜 取材後記 〜
駄菓子でワインを飲むなんて、アリエナイ。果たして本当にそう?
そんな疑問からソムリエ吉川さんを招き、なかば強引に探り当てたワインとのペアリング。
あらためてスパークリングワインの包容力を思い知らされた。なんなら駄菓子全部、カヴァでもいいかも、そう感じさせるほど“泡”ならではの、口内リフレッシュ感は、味濃いめの駄菓子とマッチする。それでも合わせの指標には、ワインと料理のペアリング要素があった。
ワインが違えば、きっと駄菓子もまた別のものになったはず。ベストな組み合わせを探す体験は料理であれ、駄菓子であれ、楽しいものだ。
料理とワインの数だけペアリングも存在する。「この味ならどんなワインがいいかな?」。さあ、五感を頼りに未知なるペアリングの世界へ。
白ワインに合う駄菓子、見つけた!
赤ワインでも、駄菓子がいける!