ワイン文化発祥地でつくる「オレンジワイン」
赤、白、ロゼに続く第4のワインとして、ここ数年でがぜん注目されるようになった「オレンジワイン」。
さすがに果物のオレンジを使ったワインではないことはわかっても、その製法まで知る人はそう多くありません。でもこのオレンジワイン、奥が深く、知るほどにハマるなんて話も。
そこで、ソムリエ吉川大智さんに入門編にオススメの1本を教えてもらいました。
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初めてワインがつくられた土地をご存知?
中央アジアに位置するコーカサス地方の国、ジョージアが正解。およそ8000年前と言われている。当時の醸造方法は「クヴェブリ」と呼ばれる、大きな素焼きの土器を地中に埋めて自然発酵を促すという、原始的なスタイルだ。
このクヴェブリ製法は、今話題の自然派ワイン、ヴァンナチュール、ナチュラルワインにとってのいわばルーツ。だが、手間とコストがかかることから、現在この製法でつくるワインは、全生産量のおよそ10%程度に激減、海外への輸出もほとんどない状況だ。
ここに紹介する「オレンジワイン」は、ワイン発祥国ジョージアのそれもクヴェブリ製法でつくられた1本。
オレンジワインとは?
まずは、「オレンジワイン」についてサクッとおさらい。
オレンジワインとは、白ワイン用のぶどうを使って、赤ワインをつくる製法(果皮や種を含んだ状態で発酵させる)で醸造したワインのこと。白ワインともロゼワインとも違う、独特の味わいと色調をもつ。
ちなみに、ジョージアではその色調が琥珀色に見えることから「アンバーワイン」と呼ばれていて、「オレンジワイン」の呼び方は、2000年代に入ってから付けられた名称だ。
パパリ・ヴァレー スリー・クヴェブリ・テラスズ ルカツィテリ
産地:ジョージア / カヘティ地方
ぶどう品種:ルカツィテリ
タイプ:オレンジワイン
アルコール度数:14.5%
味わい:辛口ミディアムボディ
価格:2850円
ワイン文化発祥の地でつくる
元祖自然派ワイン
この「パパリ・ヴァレー」に使われるぶどう品種は「ルカツィテリ」。ジョージアだけでなく、アルメニアや東ヨーロッパの国々でも栽培される酸味の強い“地ぶどう”。その実、世界のあらゆるぶどう品種を掲載する「ソムリエ教本」にも載っていない、マイナーな品種でもある。
これが、独自の自然発酵を促すクヴェブリ製法により、唯一無二の味わいを生み出すんだから、驚かずにはいられない。
ジョージア最大のワイン醸造地、カヘティ地方にある「パパリ・ヴァレー」は、小規模の自然派ワイナリー。できるだけ人の手を介さない醸造プロセスを重要視したスタイルで、伝統的なクヴェブリ製法と現代テクノロジーを融合して成功を納めている。
濁りや渋み、酸味を強く感じさせる、個性的といえば個性的なオレンジワインがまだ多いが、「パパリ・ヴァレー」のそれは、一言でいえばクリーン。色合いも飲み口も、体にスーッと入ってくる心地よさまでもが素晴らしい。
手巻き寿司パーティに最適!
どちらかと言えば、色調は薄め。アプリコットを連想させるほのかに甘い香りと、紅茶や烏龍茶のようなさりげない渋みが印象的。オレンジワインによくある特有の渋みや酸味は控えめだ。
クセの強いオレンジワインは好き嫌いが分かれるところだが、パパリなら料理との相性もいい。
ボクが提案するベストなペアリングは「手巻き寿司」。サーモンやエビ、いくらや生しらす、たくあんの塩味を効かせたトロたくなんかもいい。海苔のほのかな磯香りと、酢飯のやわらかい甘みがパパリのオレンジワインに絶妙にマッチする。
お好みのネタを用意して酢飯をつくって、手巻き寿司パーティーのお供に「パパリ・ヴァレー」はどうだろう?