ワインがすすむ「駄菓子」【赤ワイン編】

ワインに合わせるアテは、小洒落た料理だけがすべてじゃない。

ラフに気取らずに、ハードルをもっともっと下げていけば、ワインに最適な駄菓子だって見つかるかもしれない……。

なんて考えだしたら、もう止まらない。

時代を超えて愛される駄菓子。ヘルシー至上主義のこの時代だって、細々と生き続けるキング・オブ・JUNK FOOD。まさか……なペアリングが存在するかもしれない。いや、あって欲しい!

ソムリエ吉川大智さんを緊急招集。ベストマッチンな赤ワインと駄菓子の組み合わせを探してみた。

吉川大智(よしかわだいち)
世界40ヵ国200都市の酒場とワイナリーを旅した元バーテンダー。JSA認定ソムリエ。現在は多数のメディアにてコラムやエッセイを執筆するライターとして活動中。

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Instagram:@sukoburuwines

駄菓子の奥深さに
ペアリングのセオリーで挑む

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TABI LABO 平野 星良(以下、平野)

まずは企画にご賛同いただき感謝いたします。さすがに駄菓子とのペアリングは、お初ですよね?

ソムリエ 吉川大智(以下、吉川)

もちろん、人生初です。

正直、「合わないでしょ!」というか、ペアリングが成立してもらっちゃ困る、みたいな思いもなくはないです(笑) だけど、ペアリングの方法論が駄菓子でも成立するかは興味があります。

平野

方法論とは、ペアリングのセオリーみたいなものですか?

吉川

はい。ワインと料理を合わせていくとき、大まかに分けて5つの要素があります。まずはそこに照らし合わせながら、駄菓子との相性をみていくといいかもしれません。

<<ワインペアリングの5大要素>>

① ワインと食材の色味
② 味の濃さとワインの飲み口の重さ
③ 対称(相対する)の味
④ 味わいの香り
⑤ 産地で合わせる

平野

なるほど、闇雲に合わせていくよりも指針がしっかりしている方が、最適解を見つけやすいということか! これが駄菓子に通用するのか、ですね。

早速いってみましょう! 大人買いしちゃったんで、いくらでもおかわりしてください。

ソムリエ 吉川大智(以下、吉川)

うぁわ、懐かしい。子どものころよく食べたなぁ。

平野

今回、比較対照に2種類の赤ワインを用意しました。ひとつは以前ご紹介いただいたセブン-イレブンの最強コスパワイン「ヨセミテ・ロード リミテッド・セレクション」のカベルネ・ソーヴィニヨン。もう1本は吉川さんご推薦カリフォルニアの「スラムダンク」。どちらもフルボディタイプです。

吉川

セブンの「ヨセミテ・ロード リミテッド・セレクション」は、飲みごたえがあり本当によくできたワインです。芳醇な果実味とスパイシーなアロマは、駄菓子でもオールマイティに合わせられるんじゃないかな。思い立ったらすぐ買えて、試せるのもいいかなって。

平野

「スラムダンク」はどんなワインなんですか? 駄菓子とのペアリングで、どういった点がマッチしそうですか?

吉川

「スラムダンク」に使われているのは、プティシラー(55%)とジンファンデル(45%)。原産はヨーロッパですが、現在ではほぼカリフォルニアでしか栽培されていないブドウ品種で、どちらも個性の強いブドウです。

マイケル・ジョーダンのスラムダンクのように力強くて優雅で完璧。そういうワインを完璧なブレンドで作ろうというのがコンセプトなんだそう。

平野

本来ならどういう料理と合うんでしょう?

吉川

ステーキ肉といえばジンファンデルっていうイメージを持たれている方も多く、このワインもバーガーとかホットドッグとか味の濃い肉料理と合わせて飲まれていますね。濃いめの味わいにマッチします。

ワイン業界では、よく“ジャミーでスパイシー”って表現する味わいです。

平野

“ジャミー”というのがよくわかりません(笑)

吉川

一言でいえば「ジャムっぽい」という感じ。濃縮したベリーやフルーツジャムのような香りのあるワインのことです。

平野

あ、なるほど。ジャムからきているのか!

いわゆる醤油やみりん系の日本の和食っぽい味わいに赤が合うなんて聞きますが、駄菓子のなかにもそういった味付けのものがありますよね。

吉川

醤油とかみりんの和風の味わいって、ベリー系の赤ワインと相性がいいといわれています。それっぽい駄菓子を選ぶなら……「焼肉さん太郎」とか。

平野

これ、子どものお菓子にしては結構辛い。それとニンニクのフレーバーが強いですね。「ヨセミテ・ロード」も「スラムダンク」も、なんとなくこのニンニクが邪魔している感じがします。

吉川

王道の醤油とみりん、そこにピリ辛な味がしますよね。これだと「スラムダンク」よりも「ヨセミテ」の方が相性いいかも。ピリ辛要素がなければハマりそうですけど。

竹串にささったイカゲソとか、甘ったるい味。ああいった風味の方がいいかもしれませんね。

平野

コレとかどうでしょう?「紋次郎いか」。大人が喜ぶ珍味〜って味わいですね。ワインよりむしろ日本酒が欲しくなる。

吉川

塩っぱいんだけど適度に甘さもある。だけど、少しイカの香りが強くて「スラムダンク」のベリー感とケンカする感じがしますね。うーん、難しい。

平野

醤油とみりんがベースということでいえば、「うまい棒 テリヤキバーガー味」なんかはどうでしょう?

吉川

味としては悪くないんですが、サクサクしたコーンスナックタイプなだけに、口の中で溶けていっちゃいますね。それが難しいかなー。食感含めて楽しむのもペアリングの醍醐味ですからね。

平野

どれもそうですが、駄菓子ってその味を出すためのフレーバー感が強い。なんというか、風味付けがTOOマッチ。それがワインと合わせにくいんでしょうか?

吉川

「うまい!」って思わせる表面的な味わいに長けていて、それで食べさせるんじゃないでしょうか。

対して、たとえばブルーチーズなんかは、塩っぱさに加えて味の余韻がありますよね。余韻が口中に残るところにワインが流れてくるからマッチする、という部分もあると思います。

ついに、見つけた「ビッグカツ」

平野

これも懐かしいですね、「ビッグカツ」。よく食べたなあ。ソースがかかっていた記憶がありますが、最近のはソースがないんだ。

吉川

一応、「スペシャルソース味」なんですね。

あれっ、合う!悪くないかも。タンニン強めの「スラムダンク」の渋甘な味わいが、意外と合う。

平野

スタート前から「ビッグカツ」推しでしたね。ソースの風味と赤ワインが合うだろうって。

で、「ビッグカツ」、わりと甘いっすね。もっと塩っぽいイメージだったけど。ソースというよりもカレーっぽいスパイス香がしますね。子どもの頃と印象変わったなあ。

吉川

本来ならば、牛肉のワイン煮込みとか、ステーキ肉や飴色にローストした玉ねぎみたいな味わいが合うはずなのに、ジンファンデルのスパイシーなニュアンスが、カレー粉の衣にもいい具合にリンクしているような気がします。「ビッグカツ」、わるくないですね(笑) 

平野

不思議な感覚ですね。悪くない組み合わせ。口の中で気持ち悪さがないっていうか。

吉川

今日食べてきた駄菓子の中でのマッチングなら一番かも。なんて言うのかな、この組み合わせなら許せる。

平野

「ヨセミテ・ロード」だとどうです?

吉川

こちらは芳醇な果実味と、ブラックベリーや黒コショウのようなスパイシーなアロマがあるから、照り焼きやソースっぽい味の方が相性いいと思いますよ。「うまい棒 テリヤキバーガー味」なんて、ほら。

平野

ほんとだ、これはこれでいける。コーンスナックって、ワインを受け入れないと思ってた。これはこれで組み合わせを見つける楽しみがありますね。

吉川

ムリくり口を合わせに行ってるものもあるなかで、やっぱり「ビッグカツ」だけは納まりがいい。

平野

では、一応の結論を。「スラムダンク」に駄菓子を合わせるならば、それは「ビッグカツ」ということで。いかがでしょう?

吉川

そうですね。本来とてもおいしいワインなのでステーキと合わせたいところですが(笑) でも、「ビッグカツ」との相性は悪くなかったと思います。

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スラム・ダンク

【生産地】アメリカ / カリフォルニア
【品種】プティシラー55%、ジンファンデル45%
【タイプ】辛口 フルボディ
【アルコール度数】14.8%
【価格】2500円前後

〜 取材後記 〜

駄菓子でワインを飲むなんて、アリエナイ。果たして本当にそう?

そんな疑問からソムリエ吉川さんを招き、なかば強引に探り当てたワインとのペアリング。ノスタルジアではなく、真面目に駄菓子とワインの正解を探り当てようと試みるとき、羅針盤となったのはワインペアリングのロジックだった。

醤油やみりんを用いた和テイストの味付けに赤ワインというアプローチより、ハマったのはワインと駄菓子それぞれに共通したスパイシーな香りの組み合わせ。

必ずしもベストマッチな組み合わせとは限らない。それでも、駄菓子とワインの相乗効果を探る時間は、料理とワインの相性を見つける楽しさにつながるものがある。

「この味なら、あんなワインがいいかも」。ペアリングの世界は無限に広がっている。

駄菓子とワインのペアリング【白ワイン編】

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