「ヘンプクリート」が明日の建築を変える!
ある日、フランス・パリを拠点とする建築事務所「Lemoal Lemoal」に、公共施設「Pierre Chevet Sports Center」の建設依頼が舞い込んできた。
限られた予算と敷地で、地域に長く愛されるスポーツセンターを作るべく選ばれたのは、サステイナブルな建築資材として注目を集める「ヘンプクリート」。
石灰と麻の茎を混ぜて作るため、見た目こそ無骨だけど、資材界の新たな“マドンナ”と呼べるかもしれない……。その理由はこちらの3つ。
1つ目は、麻の栽培自体が簡単だということ。少量の肥料と水分のみで、数ヵ月で約2〜3メートルも育ち、丈夫さは天然繊維の中でもピカイチ。
2つ目は、スムーズかつ機能的な建築を叶える特性をいくつも持っていること。たとえば天然の断熱性や音響性能、接着剤やモルタル要らずで組み立てられる、などなど。
なかでも特筆すべきは、火災時でも30分間は崩れずに維持できるほどの高い耐火性(火災規格REI30準拠)。追加の断熱材要らずで広々とした空間を提供しながら、万が一の安全にも備えているというわけだ。
そして3つ目は、原料の麻には森林の約2〜4倍のCO2を吸収する力があること。
ケンブリッジ大学のDarshil Shah博士によると「森林のCO2吸収量は通常、1ヘクタールあたり年間2〜6トン。一方、工業用の麻は栽培面積1ヘクタールあたり年間8〜15トン」なのだそう。
日本でも、古くから神社のしめ縄や力士の化粧まわしに使われていた麻が、遠く離れたフランスで優等生になっていたなんて。すごいぞ麻、農家、そして建築家たち!
そうして完成したスポーツセンターがこちら。きっと住民に愛され、受け継がれていく憩いの場になることだろう。
持続可能な建材を選ぶことは、持続可能なコミュニティを作ることにも繋がるのかもなぁ……。