培養肉は「イタリア食文化」を脅かす存在【政府見解】

14世紀から16世紀にかけて、イタリアを中心に西ヨーロッパで花ひらいた「ルネサンス」。人間の個性や自由な生き方、価値観を求め、古代ギリシア・ローマの古典文化に倣い、自分たちの生き方を新たな視点で捉え直した文芸復興の象徴だ。

時は流れて500余年の現在、食における“革新運動”は、イタリアにおいてはルネサンス的捉え方からは大きく逸脱しているとの判断が下される可能性が高い。

先月末、イタリア政府は培養肉をはじめとする合成食品を禁止する法案を「支持する」と発表した。法案が可決されれば、違反者には最大で6万ユーロ(約880万円)の罰金が課されることになる。

代替肉のひとつ「培養肉」とは、字のごとく動物から採取された細胞をアミノ酸などの栄養分の入った培養液で増殖し、食肉をつくりだす技術。プラントベースの植物肉とことなりこちらは、いわば“肉そのもの”。味や食感のみならず、肉がもつ栄養成分を含んでいる。

だが、植物肉と異なり培養肉は販売にあたり政府からの認可が必要。現在のところ認可が降りる国はシンガポール(2020年)とアメリカ(2022年)の2ヵ国のみ。EU加盟国はまだ可否を決めかねている状況だ。

農業省で農業と食糧主権の再ブランド化を担当するFrancesco Lollobrigida氏は、イタリア食文化の伝統食の安全性を強調し、禁止法案支持の姿勢を示した。

ところで、培養肉を排除しようとする動きは、数ヵ月前より「Coldiretti」をはじめとする農業生産者団体を中心に広まり、50万を超える署名が集まっていたという。なかには極右で知られるジョルジャ・メローニ首相の名も。

「農業に従事するみなさんの卓越性を守るだけでなく、消費者を守るという観点においても、農業に従事するみなさんがトップランナーとなる。そうした施策でのみ私たちは祝うことができるのです」

首相官邸前で行われたColdirettiによる集会の場で、メローニ首相はこうコメントをのこしたことを『CNN』が伝えている。

 

アトリエや工房から生み出される絵画や彫刻と培養肉を、「再生」や「復興」と同じ文脈で捉えることはもちろんできない。

それでも、もし仮に培養肉を食の分野における「自由」や「解放」と広義に捉えてみるとしたら……ルネサンス期を生きた人々ならば、この問題をどう解釈するだろう。

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