家具が“暴露”する、モダニズムの「罪」

今年4月に開催された世界最大のデザインの祭典「Milano Design Week 2024」。そこでお披露目されたというコンセプチュアルな家具。インテリアにこだわるあなたに是非、ご覧いただきたい。

©Andrea Rossetti

金属性の無機質なアームに、花柄とフリルをあしらったテキスタイル。美しくもあるが、「どこか不思議な組み合わせ」と違和感を覚えたなら勘がいい。その違和感こそ、作品「La Casa Dentro」が表現したかった“モダニズムの罪”なのだからだ。

モダニズムが
空間から奪い去ったもの

©Marco Cappelletti

家庭的な雰囲気を演出する、あらゆる装飾的性質を居住空間から消し去った張本人こそ、モダニズムなのです。

こう語るのは「La Casa Dentro」デザイナーのTrimachi氏とFarresin氏。

蛇足ながら、モダニズムとは20世紀はじめに絵画、建築、文学などの分野でおきた芸術運動のこと。「近代主義」とも表現され、過去の形式に囚われずに新しい表現方法を模索する試みだ。

特徴としては鉄、ガラス、コンクリートといった(産業革命により大量生産が可能となった)新しい材料が使われていること。そして、19世紀に流行した華々しさを削ぎ落とした意匠。合理的かつ機能的なデザインは“最先端”を意味し、人々はこれを好んで建築や家具など住空間にも積極的に取り入れた。

 

しかし、ここがモダニズムが「過ちを犯したポイント」だと両氏は考えている。フリルやレース、そして明るい色のテキスタイル……こうした女性的な装飾を低俗なものと考え、空間から排除するようになったというのだ。

©Marco Cappelletti

そこに着目したTrimachi氏とFarresin氏は、機械的でマスキュリンな家具にあえてフェミニンなモチーフを装飾。相交わることがなかった2つの要素を共存・対比させることで、モダニズムが男性的な厳格さを重視するあまり、女性らしいデコラティブなものを空間から排除してきたモダニズムの功罪に人々の目を向かせるべく、「La Casa Dentro」を世に送り出してきた。

“可愛らしい装飾”に潜む力

我々のプロジェクトは、ポストモダンのパスティーシュ(模倣)でも、わざとらしいもの、安っぽい紛いものを賞賛するためのものでもありません。 個人的な思い出や、文化的に中傷されがちなもの―――装飾的なもの、かわいらしいもの、ひいては女性的なものに対して価値を与えようとする、試みなのです。

「La Casa Dentro」、直訳すれば「内なる家」は、本人たちが実際に幼少期を過ごした家をモチーフに完成させたコレクション。実家のカーテンの模様や椅子にあしらわれていた刺繍……。モダニズムによって蔑まれたと彼らが捉える女性的な装飾は、どこか暖かい記憶を私たちにも想起させる不思議な魅力を内包している。

©Marco Cappelletti
©Marco Cappelletti
©Marco Cappelletti

規範を疑え、モダニズムの脱コード

©Marco Cappelletti

ところで、Trimachi氏とFarren氏はこれらの作品を通じて、モダニズム中心的な現在のデザイン規範にも挑戦している。

より近代的で合理的、そしてより男性的なデザインを求めてきた我々だが、果たしてそれは正しかったのだろうか。今もモダニズムは洗練されたデザインとして崇められているが、人間が住まう空間として安らぎを感じるデザインとは、いったいどんなものなのだろうか、と。

20世紀、モダニズムというメインストリームに押し出され、インテリアから行き場を失ったレースやフリルたち。いま、あらためてその価値を見直すときだと、「内なる家」は訴えかけてくる。

Top image: © Marco Cappelletti
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