テキサス州「中絶禁止法」施行後、新生児の死亡率が12.9%上昇
妊娠初期の中絶を禁止する州法を3年前より施行している米テキサス州において、施行後1年の間に乳児の死亡率が増加したという統計が明らかになった。
前年比13%増加
乳児の死亡率と中絶禁止の因果関係
2021年9月、「胎児心拍数確認後における人工妊娠中絶を禁止する法律(SB8)」を導入した同州。胎児の心拍数が確認されてからの中絶は認めない、レイプや近親相姦による妊娠も例外としない同法は、大半の女性が妊娠を自覚しない妊娠6週目における中絶を事実上禁止したものだ。
ジョンス・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院の研究者らが主導した最新の研究で明らかになったのは、法律施行の翌年の乳児死亡率の増加だ。
テキサス州と全米全土の月間死亡証明書データを分析したところ、2021年から22年にかけてテキサス州の乳児死亡者数は1985人から2240人へと増加。コロナウイルスのデルタ株がアメリカで蔓延していた時期でもあるが、前年比で225人(約13%)増加したことになる。さらに、先天異常に起因する乳児死亡が異常に増加した年でもあったことも指摘。こちらの増加率は1年で22.9%にも上ったようだ。他州では3.1%減少していたというのに。
こうした数字を受け、研究者らは背景にある潜在的なメカニズムの解明を進めている。ただ、解明には乳児死亡の母親と臨床的特徴をリンクさせて分析していく必要があると考えているようだ。
「この研究結果は、中絶禁止が福祉サービスへの障壁を乗り越えることができない妊婦や、潜在的にその家族に壊滅的な結果をもたらす可能性があることを明らかにしている」
ブルームバーグ公衆衛生大学院の助教授で同研究における主執筆者のひとり、Suzanne Bell氏のコメントを同校リリースが紹介する。
先天異常に起因する乳児の死亡率の増加。生後数週間で命の危険に晒される可能性がある赤ちゃんであっても中絶を認めないとするテキサス州のスタンスは、はたして今後改正されることはあるのだろうか。