2050年、4600万人感染……?未来を脅かす、もう一つのパンデミック

旅の計画、留学の準備、新しい仕事のスタート……。未来に希望を抱き、日々を駆け抜ける私たち。だけど、世界の片隅では今もなお多くの人々を苦しめる深刻な問題が渦巻いている。それが「HIV(エイズ)」だ。

「過去の病気」と決めつけてはいないだろうか? じつは、HIVは決して過去の脅威ではない。「国際連合エイズ合同計画(UNAIDS)」の最新報告書によると、現在の対策のペースでは2050年にはHIV感染者が4600万人に増加するという、ショッキングな未来を描いている。

見えない壁が助長する感染拡大
社会問題とHIVの複雑な関係

HIV問題の根深さは、単なる医療の問題にとどまらない点にある。「Down to Earth」の記事は、貧困、差別、ジェンダー不平等といった社会問題が、HIV感染拡大のリスクをさらに高めている現状を浮き彫りにしている。

たとえば、東部・南部アフリカの22ヵ国では、10代の少女と若い女性のHIV感染率は、10代の少年と若い男性と比べて3倍以上にもなるという。これは、経済的自立が難しく、教育の機会も限られる女性が、性交渉において自らの意思を表明しにくい状況に置かれやすいためだ。

医療現場に潜む差別
HIV陽性者を苦しめる「もう一つの病」

さらに、医療現場における偏見や差別も、HIV対策の大きな障壁となっている。同記事によると、2020年から2023年の間に、HIV陽性者の約7人に1人(13%)が医療従事者から差別や偏見を経験しているという。「HIV陽性者だから」という理由で、医療従事者から心ない言葉を浴びせられたり、十分な説明を受けられなかったりするケースも少なくないようだ。

本来、HIV陽性者にとって、医療従事者は心強い味方であるはず。けれど、差別や偏見によって、医療機関へのアクセスを阻害され、適切な治療やケアを受けられない状況に追い込まれることは、決して許されることではない。

無関心を打ち破り
未来への希望をつなぐ

「遠い国の話」と他人事のように感じている人もいるかもしれない。しかし、グローバル化が進む現代社会において、HIVは決して対岸の火事ではない。SDGs(持続可能な開発目標)の目標3「すべての人に健康と福祉を」は、HIV対策を含む、すべての人々の健康を促進し、福祉を向上させることを目指している。つまり、HIV対策は、国際社会全体で取り組むべき喫緊の課題。

私たち一人ひとりが、HIV/エイズに関する正しい知識を身につけ、偏見や差別をなくしていくこと。そして、HIV陽性者が安心して暮らせる社会を築きあげていくことが、未来への希望をつなぐために不可欠なのは言うまでもない。

👀 GenZ's Eye 👀

昔の病だと思われがちなHIV、実は今年の日本でも患者数が増加に転じています。病気としての症状だけではなく、周りからの偏見とも戦わなければならないということは患者にとって大きな障壁となっていることに違いありません。差別や偏見を通して人権侵害の様も浮き彫りにするこの問題。声を上げることのできない人々にこそスポットライトがあてられるべきであることを教えてくれているのではないでしょうか。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。