カカオ豆の滅亡を回避せよ!巨大企業も投資した「細胞培養チョコレート」
甘くて美味しいチョコレートは、世界中で愛されるスイーツだ。しかし、その裏では原料となるカカオ豆の供給不安が深刻化している。このままでは、いつかチョコレートが食べられなくなる日が来るかもしれない……。
そんな未来を回避すべく、今、世界中で注目を集めているのが「細胞培養チョコレート」だ。
カカオ豆の危機
チョコレートが食べられなくなる日
フードテックメディア「Green Queen」によると、2023年のカカオ豆価格は歴史的な高騰を記録し、価格指標はなんと平年の4倍にまで跳ね上がっている。 その背景には、気候変動によるカカオ生産量の減少が挙げられるという。
カカオ豆の主な生産地である西アフリカでは、近年、干ばつや洪水などの異常気象が頻発。カカオの栽培に適さない気候になりつつあるのだ。いっぽうで、世界的な人口増加に伴い、チョコレートの需要は増加の一途をたどっている。
このままでは、需要と供給のバランスが崩れ、チョコレートの安定供給が困難になる可能性も危惧されている。
細胞培養技術が救世主に
サステナブルなチョコレートの創造
そこで期待が高まっているのが、植物由来の原料を用いたり、動物細胞を培養して肉や魚介類を生産する「細胞農業(Cellular Agriculture)」と呼ばれる技術だ。 細胞培養技術を応用すれば、従来の農地や気候に依存せず、サステナブルな方法でチョコレートの原料となるココアバターやココアパウダーを生産できる可能性を秘めている。
そして、イスラエルのフードテックスタートアップ「Celleste Bio」は、カカオ豆の細胞を培養し、ココアバターとココアパウダーを生成する技術を開発した。この技術は、従来のカカオ栽培で必要とされていた広大な土地や大量の水資源を必要としない。
さらに、気候変動の影響を受けずに安定的にココアを生産できる可能性を秘めているという。
巨大企業も投資
細胞培養チョコレートが切り開く未来
同社の革新的な技術は、投資家たちのあいだでも大きな話題を呼んでおり、2023年1月には450万ドルもの資金調達に成功した。
注目すべきは、この資金調達にあの「Mondelēz International(モンデリーズ・インターナショナル)」が参加している点だ。彼らは「Milka」や「Cadbury」など、世界中で愛される有名チョコレートブランドを多数傘下に持つ巨大企業。
「気候変動は、カカオの供給に大きな影響を与えている。サステナブルな解決策が急務だ」と、Supply Change Capitalの共同設立者兼マネージングパートナーであるShayna Harris氏は語る。
「Mondelēz International」は近年、環境問題への対応を強化しており、その一環として細胞培養チョコレートへの投資を決めたとみられる。 同社のSnackFutures Ventures責任者であるRichie Gray氏は「Cellesteの技術は、伝統的な農業慣行を補完する技術として、大きな可能性を秘めている」と述べている。
細胞培養チョコレートの実用化には、まだ時間がかかるかもしれない。しかし、実用化されれば、倫理的な問題や食味、価格など、解決すべき課題はあるものの、私たちがチョコレートを楽しみ続けられる未来に大きく貢献する可能性を秘めていると言えるだろう。