AR利用で地域産品に革新?つくば発のAR自販機『買ってみっPeyo』
日本各地には、その土地ならではの魅力的な産品が数多く眠っている。
しかし、その存在を消費者に広く認知させ、手に取ってもらうことは、特に地域の中小企業にとって大きな課題だ。大規模な広告展開や複雑なマーケティング戦略は容易ではなく、素晴らしい商品が埋もれてしまうケースも少なくない。
そんな中、茨城県つくば市で、地域産品の販路開拓と商品力向上を支援するユニークな取り組みが注目を集めている。
株式会社鶴と学びが手がけるテストマーケティング自動販売機『買ってみっPeyo』は、最新技術と消費者の声を繋ぐ新しいプラットフォームだ。
ワンタップで商品を立体表示。スムーズな顧客調査も
『買ってみっPeyo』の最大の特徴は、購入した商品にスマートフォンをかざすだけで体験できるAR機能の搭載。
このAR機能は、商品を立体的に表示でき、またタップ一つでアンケートフォームへと誘導し、消費者の声を直接収集する仕組みを持つ。
従来のテストマーケティングでは得難かった、購入直後の新鮮な感想や具体的な改善要望が、生産者のもとへ届けられるほか、回答者への特典なども用意し消費者にとってもメリットがありスムーズな導線から調査を行える。

2023年にスタートしたこのプロジェクトは、これまでに28以上の地域事業者が参加し、商品の改良や新商品開発の貴重なヒントを得てきた。
第8期を迎えた現在も、地元つくば市や近隣地域の企業、農家、カフェなど、個性豊かな事業者の商品がラインナップされている。
例えば、筑西市の株式会社サーフェスが生み出したカーボン端材を活用した「定規アソートセット」や、守谷市のKnot COFFEEが提供する「ドリップバックコーヒー&パティシエが作る焼き菓子のプチギフト缶」、龍ケ崎市の横田農場によるグルテンフリーの「米粉パンケーキミックス」4種(ビーツ・かぼちゃ・ほうれん草・プレーン)などが並ぶ。
さらに、プロジェクトを運営する鶴と学びとつくばSweetsが共同開発したオリジナルキャラクター入りの「つくば開運クッキー缶」や、美浦村のまちづくり美浦と連携した「安中いちごサイダー」といった、地域資源を活かした商品も目を引く。
これらの商品は、自販機を通じて消費者の反応を直接確かめることで、さらなるブラッシュアップを目指している。


地域を繋ぎ体験を深める『買ってみっPeyo』の進化
『買ってみっPeyo』の挑戦は、単なるテストマーケティングの枠を超え、地域全体を巻き込む動きへと発展しつつある。
今後、AR機能はさらに進化を遂げ、購入者の声を商品開発に活かす双方向型アンケートARを深化させるだけでなく、企業や生産者との“共創プロモーション”へと拡充していく計画だ。
商品の紹介に留まらず、製造現場の映像や商品の背景にあるストーリーを伝えるミニ動画、オリジナルキャラクターとの連動など、楽しさと学びを融合させた多様なAR体験の提供を目指す。

さらに、この自販機を起点とした地域イベントや観光との連携も視野に入れている。AR技術を活用したスタンプラリーや回遊型体験を企画することで、地域内の周遊を促進し、観光資源の活性化や地域経済への貢献を強化していく考えだ。
消費者は商品購入を通じて新たな発見をし、生産者は貴重なフィードバックを得て、地域全体が活気づく。そんな好循環を生み出す可能性を、『買ってみっPeyo』は秘めている。
地域産品の魅力を掘り起こし、生産者と消費者を繋ぎ、テクノロジーでその関係性を豊かにする。つくばから始まったこの小さな自販機の大きな挑戦は、日本各地の地域活性化に新しい光を投げかけている。