これが変わらない“パーティドリンク”の姿。『BuzzBallz』と『Magnum』ヒットが示唆する、Z世代にウケるアルコール
若者、特にZ世代のアルコール消費行動は変化し続けており、彼らが選ぶお酒にも新しいトレンドが見られる。
その一つが、コンビニエンスストアで手軽に購入できるRTD(Ready-to-Drink、購入後すぐに飲めるアルコール飲料)製品。中でも、アメリカ発の『BuzzBallz』は、そのユニークな外観と巧みなマーケティングで、アルコール離れが指摘されるZ世代の心を掴み、大きな注目を集めている。
アルコール市場の縮小が懸念される一方、本商品のヒットを踏まえると、若者にとっての高アルコール飲料の価値はさして変わっていないようにも見えるだろう。
見た目はポップ、味は刺激的──やはり魅力は“映える”酒
カラフルな球状パッケージに収められたこの飲料は、一見すると子どものお菓子のような見た目だが、中身は13.5%の高アルコール飲料。見た目とのギャップや手軽さから、「プレパーティー酒」として人気を博している。
もともとはテキサスの高校教師が発案したBuzzBallz。米国内での話題がTikTokを通じて広がり、2022年にはアメリカ国外でも認知され始めた。特にZ世代に向けたマーケティングが巧みで、特定の味や色が限られた店舗でしか手に入らない仕様にすることで、“宝探し”的な購買体験を演出。こうした仕掛けがSNS上での拡散を後押しした。ブランドはその勢いのまま、2023年にサゼラック社に買収され、買収額は5億ドル以上と推定されている。
英国のファッションブランド「Peachy Den」が開催した6周年記念パーティーではBuzzBallzが振る舞われ、ドリルラッパーのCeechynaaや人気YouTube番組『Chicken Shop Date』のクリエイターAmelia Dimoldenbergといった著名人が楽しむ様子も目撃された。
高級レストランの料理と並べて、あえて皮肉っぽくディナーパーティーで提供されることさえあるというのだから、その浸透ぶりは相当なもの。この現象は、BuzzBallzが飲み物を超え、一種のカルチャーアイコンとなりつつあることの表れかもしれない。
類似したトニックワイン『Magnum』も人気に
BuzzBallzの他にも、Z世代の間で人気を集めている“映える酒”がある。それが、ジャマイカ発祥のトニックワイン『Magnum』だ。見た目は薬瓶のような茶色の小瓶で、アルコール度数16.5%とBuzzBallzよりもさらに高く、味も薬草系の風味は「風邪薬のよう」と評されることもある。
そもそもは滋養強壮の効果が謳われていたドリンクだったが、口コミとバイラルキャンペーン、そしてノッティングヒルカーニバルのような音楽イベントでの店舗ジャックなどを通じて人気を築き、現在は用途を問わずBuzzBallzのようなプレパーティドリンク的な需要の下に人気を広げているようだ。
Z世代は一般的にアルコール消費量が少ないとされているが、BuzzBallzやMagnumのように、製品の魅力、価格設定、そして何よりもSNSを中心としたターゲット層に響くマーケティング戦略がうまく噛み合えば、彼らにとって価値のあるアルコールとなり得る。
そして、健康面への配慮が加速したとはいえ、パーティの場での飲酒文化は健在であり、SNS映えを狙えれば、かつてと同じく高アルコール飲料は一定の需要を持ち続ける商品なのだろう。






