「サプライズアレルギー」世代が、クレカに求めるただひとつの条件

ちょっとした予想外の出費で「やっちゃった……」と落ち込む。そんな経験、あなたにもありませんか？いま、そう感じるZ世代が増えています。

理由は物価高や将来不安だけじゃない。本質はもっとシンプル。「見えないこと」が不安の正体なのです。

サプライズやハプニングにワクワクする時代は、もう昔の話。何もかも“見えている”状態じゃないと、安心して前に進めない──。そんなZ世代の消費マインドを象徴するのが、最近じわじわと広まりつつある言葉、「サプライズアレルギー」です。

2025年8月、株式会社メルカリの調査機関「サーキュラーエコノミー総研」が発表したデータによれば、Z世代（18〜26歳）の約3人に1人（33.3％）が「想定外の出来事を失敗と感じる」と答えています。いっぽう、バブル世代（43〜51歳）では14.7％。世代間で2倍以上の差があるという結果に。

つまり、Z世代にとって「予測できないこと」自体がストレス。
金額の大小にかかわらず、予定外の出費や出来事は精神的な負担になってしまうのです。

「そんなこともあるか」と流せるか、それとも「また予定が狂った」と思ってしまうか。あなた自身は、どうでしょう？

この「見えないことがストレス」という傾向は、お金の使い方にも色濃く表れています。

調査では、Z世代のじつに57.4％が「予算が崩れるとストレスを感じる」と回答。さらに31.3％は「自分でお金の流れを管理できていないと不安になる」という声も少なくありません。

実際、クレジットカードの利用明細を「毎日チェックする」人は12.2％。週1回以上確認する人まで含めれば、半数をゆうに超える割合に達しています。ここで大事なのは、「使いすぎ防止」のためにチェックしているわけではないという点。「今の自分の経済状況が把握できていること」自体が、いわば安心材料になっているということ。

だからこそ、Z世代の82％が「利用明細がリアルタイムで見える」ことを重視。ポイント還元やキャンペーンの充実と並んで、クレカ選びの重要な基準になっているようです。

Z世代がここまで「見えること」にこだわる背景には、今の時代そのものが抱える不確実性が挙げられます。気候変動、パンデミック、テクノロジーの急進展、そして国際情勢の揺れ動き……。世界はどんどん予測がきかなくなり、将来の設計も難しい。

こうした時代は「VUCA（ブーカ）」と呼ばれます。Volatility（変動性）、Uncertainty（不確実性）、Complexity（複雑性）、Ambiguity（曖昧性）。Z世代は、まさにこのVUCA環境の真っ只中を生きてきた、最初の世代だということを私たちは認識しておく必要があるでしょう。

だからこそ、せめて「自分の生活だけは、自分の手でコントロールしていたい」という感覚が強くなる。「今いくら使って、あといくら使えるのか」が見えていれば、不安が少しだけ和らぐ。“見える”という安心感は、Z世代にとって生きるための前提になっているのではないでしょうか。

「予定外を受け入れられないなんて、柔軟性がない」と感じる人もいるかもしれません。でも、このサプライズアレルギーを、単なる弱さと切り捨てていいでしょうか？むしろこれは、変化の激しい時代を生き抜くための“知恵”と捉えることもできるのでは？

不確実な社会のなかで、安心できる“いま”を確保するための行動戦略。それが「見える化」を重視するZ世代のスタンスなのです。

ワクワクするサプライズよりも、今ここにある自分を確実に把握することを優先する。その選択は、VUCA時代を最もリアルに体験してきた世代が身につけた、生存戦略とも言えるでしょう。

「今の状況を把握していたい」「想定外が不安」──そんな感覚は、単なる節約志向じゃありません。これからの時代を生きるうえでの、選択の土台。クレカの明細を見て、支出を可視化する。その行動は、ある意味では未来に備える準備でもあります。

たとえば、将来のライフプランやお金の使い方をどう設計するか。そんな時にも、いまの自分を「見える化」しているかどうかが、意思決定の質を左右します。

投資という言葉にピンとこなくても、「選べる自分でありたい」と願う気持ちは、Z世代の多くが持っているはず。その第一歩は、やっぱり“見えていること”から始まるのではないでしょうか。

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