ゴッホが夢見た「日本」へ。オランダの若手アーティストが豊島で暮らす6週間

アミューズが、香川県・豊島(てしま)で国際レジデンスプログラム「Van Gogh AiR – Teshima Japan」を始動すると発表しました。ゴッホの生家ミュージアムやオランダ王国大使館との連携で実現した試みです。

ゴッホが「想像」した日本を
現代のオランダ人が歩く

フィンセント・ファン・ゴッホは、生涯一度も日本の土を踏んでいません。

それでも彼は、浮世絵を模写し、弟テオへの手紙に「日本の芸術家たちのように自然のなかで暮らしたい」と繰り返し書きました。ゴッホにとっての日本は、実在の国というより、光と色彩に満ちた理想郷だったのかもしれません。

その「想像上の日本」を、約140年後のいま、オランダの若いアーティストたちが自分の足で確かめにくる。しかも行き先は東京でも京都でもなく、瀬戸内海に浮かぶ人口約800人の島です。

応募のあった30組から選ばれた3組は、2026年8月中旬から年末にかけて、それぞれ約6週間ずつ豊島に滞在します。

拠点となるのは、アミューズが保有する甲生(こう)地区の旧漁協施設。1階が制作・展示スペース、2階が生活スペースという構成です。

美術館でもギャラリーでもなく、かつて漁師たちが網を繕っていたであろう場所。その選択自体が、このプログラムの性格をよく表しています。

芸術祭とは違う
「暮らしに溶ける」時間の使い方

瀬戸内の島々といえば、3年に一度の瀬戸内国際芸術祭を思い浮かべる方も多いでしょう。大勢の来場者が短期間に押し寄せ、作品を巡るあのスタイルとは、今回のレジデンスはまったく異なります。

アーティストたちは、島の漁業や農業──オリーブや柑橘類の栽培、田畑の手入れ──に触れながらリサーチと制作を進めます。祭りや風景、島の人々との日常的なやりとりそのものが、作品の土壌になっていく設計です。

アミューズは2025年4月に豊島の玄関口・家浦地区に「Teshima Factory」を開設し、2026年4月には「豊島の暮らしに泊まる」をコンセプトにした「ホテル聚(しゅう)」を開業しています。

観光の消費対象としてではなく、暮らしの延長線上に文化をつくるという姿勢が、一連の動きから見えてきます。

「来なかった人」の想像力が
場所を動かすこともある

ゴッホは日本に来られなかった。でも、その憧れが浮世絵の模写を生み、独自の色彩感覚を育て、やがて世界中の人々の目を変えました。

届かなかった想像力が、140年の時差を経て、瀬戸内の小さな漁港に着地しようとしている。それは「聖地巡礼」とも「文化輸出」とも違う、もっと静かな循環のはじまりに見えます。

旧漁協の窓から海を眺めるオランダのアーティストは、ゴッホが夢見た日本の何を見つけるのでしょうか。その答えは、6週間の暮らしのなかから、きっとゆっくり立ち上がってくるはずです。

2026年度 選出アーティストおよび滞在期間

選出されたアーティストは一定期間、島に滞在し、漁業や農業(田畑、オリーブや様々な柑橘など)、島本来の暮らしが息づく「豊島」の土地、風土、人々の暮らしに触れながら、それぞれの視点でリサーチや制作を行います。

第1期:2026年8月17日〜9月27日 Cas van Deurssen
第2期:2026年10月5日〜11月15日 Heringa/Van Kalsbeek
第3期:2026年11月18日〜12月30日 Noortje de Brouwer

Top image: © 株式会社アミューズ
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。