眠るためだけに、地中へ。「蟻の巣」のような寝室が北海道に誕生
北海道・大樹町の宿泊施設「Moving Inn Tokachi 北の森」を運営するフレックス株式会社が、人気客室「HOTORI(ほとり)」に新たな寝室「巣庵(すあん)」を設けたことを発表しました。2026年7月より宿泊がスタートしています。
蟻の巣のように地中へ潜り込むような構造——そう聞いて、ちょっと身構えませんでしたか。宿の寝室といえば、広くて、明るくて、ふかふかのベッドがあって。でもこの巣庵は、その全部を手放しています。

暗くて狭い空間こそが最高の寝室
「足し算」の宿に逆行する設計思想

巣庵のコンセプトは、そのまま「巣」です。動物が安全な場所を見つけて身を丸める、あの感覚を人間の寝室に翻訳した空間といえます。
追求したのは、暗さ、静けさ、こもり感、そして身体がぴたりと収まる感覚。広さや装飾といった「あると嬉しいもの」は、意図的に削ぎ落とされています。
「長く滞在するための部屋ではなく、ただ深く眠るための場所」。同社はそう位置づけています。
いま、宿泊施設の競争はどんどん「足し算」に向かっています。サウナ付き、プール付き、ラウンジにフリードリンク。グランピングの世界でも、テントの中にエアコンやプロジェクターが当たり前になりつつある。
そんな中で「暗くて狭い空間こそが最高の寝室です」と言い切る胆力に、正直おどろきました。
車中泊ブランドが「眠り」を突き詰めたら
有機的な巣の造形にたどり着いた

Moving Innは2019年の創業時、キャンプ仕様のランドクルーザーやハイエースを使ったレンタカーサービスからスタートしたブランドです。
2023年に宿泊施設「Moving Inn Tokachi 北の森」をオープンし、車中泊と宿泊を組み合わせた北海道旅行のスタイルを提案してきました。
同ブランドが一貫して大切にしているのは「原始的な感性」。風を受けること、火を熾すこと、囲炉裏を囲んで食べ語らうこと。
眠ることもまた「人間が動物として持っている本来の経験」だと捉えています。外の気配をうっすら感じながら、安全な場所で深く休む。その行為の快適さを徹底的に考えた結果が、巣庵の有機的な造形なのです。
マットレスを替える前に
「眠る場所」ごと変えてみる旅

私たちは日常で、睡眠の質をなんとかしようとマットレスを買い替えたり、アプリで記録をつけたりします。でもそれは、いつもの部屋、いつもの照明、いつものスマホ通知の中での改善です。
巣庵が提案しているのは、もっと手前の話かもしれません。そもそも「眠る場所」を変えてみること。暗くて狭い空間に身体をゆだねたとき、自分がどれだけ深く眠れるのか、試してみること。
旅先で何を見るか、何を食べるかと同じように、「どう眠るか」が旅の目的になる日は、案外すぐそこにある気がします。
リニューアル後のHOTORIは最大6名まで宿泊可能。家族や友人同士のグループ旅行にも対応しています。
Moving Inn Tokachi 北の森「HOTORI(ほとり)」
【所在地】北海道広尾郡大樹町
【宿泊開始】2026年7月〜
【定員】最大6名
【部屋構成】すみか1、すみか2、すみか3、すみか4、ホール、玄関
【予約・詳細】Moving Inn 公式サイト






