教室に「こもっていい場所」を。学生服メーカーがつくった小さな避難所

カンコー学生服と感覚過敏研究所が共同開発した、学校向けの「カームダウンボックス」が販売を開始しました。光や音の刺激から離れて心身を落ち着かせるための小さな個室空間——その名も「カンコー ポピールーム」。制服メーカーが教室に届けようとしているのは、服ではなく「居場所」です。

「ちょっとリフレッシュ」で使う子が増えた
教室の隅の小さな避難スペース

学校の廊下に設置されたカームダウンボックスの全体像(左)と、パネルを一人で持ち運ぶ様子(右)。中には丸椅子が一脚置かれている
© 菅公学生服株式会社
カームダウンボックスの説明ポスター拡大。「ここは、ちょっと落ち着きたい人の場所です」「使いたい人は先生に教えてね」などの利用ルールがイラストとともに記載されている
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カームダウンボックスとは、音や光といった感覚的な刺激に疲れたとき、一時的に身を置いて気持ちを整えるための小さな避難スペースのこと。大阪・関西万博では会場内に20カ所以上設置され、空港や商業施設でも導入が広がっています。

その流れを「学校にも」と考えたのが、カンコー学生服の研究機関「カンコー学生工学研究所」でした。

品川区立の小学校で先行導入したところ、興味深い変化が起きています。当初は授業中に教室を飛び出してしまう児童が主な利用者だったのが、しだいに「ちょっとリフレッシュしたい」という児童も使うようになったそうです。

担当教員の声も印象的です。「ボックスがない頃は、廊下のくぼみで落ち着こうとしても誰かが通るたびに途切れてしまっていた。ボックスがあることで、落ち着くことに集中でき、かかる時間が減った」。

10分ほど中で過ごしたあと、再び授業に戻れた児童もいるといいます。「特別な子のための特別な場所」ではなく、誰でも使える「ちょっとした逃げ場」になっていった——この変化こそが、この箱の本質かもしれません。

「外に出る服」をつくる会社が
「こもっていい場所」を届ける理由

カームダウンボックス内部から天井を見上げた写真。強化ダンボールの骨組みの間に白い布が張られ、外光を柔らかく遮っている
© 菅公学生服株式会社

開発パートナーは、感覚過敏研究所の所長・加藤路瑛さん。自身が感覚過敏の当事者で、13歳のときに同研究所を立ち上げた人物です。

素材は強化ダンボール。工具なしで組み立てられ、学校行事のときには複数人で持ち運べる軽さです。完全な密室ではなく、入口のカーテンを開閉することで「どのくらい外界を遮断するか」を利用者自身が調整できます。

なかでも面白いのが、天井や入口に取り付ける明るさ調整用の布。これには制服をつくる過程で出た残布が使われています。学生服メーカーだからこそ手元にある素材が、光を和らげるパーツに生まれ変わっているわけです。

1854年創業のカンコー学生服が長年つくってきたのは、子どもたちが「外に出ていく」ための服でした。その同じ会社が今、教室の中に「こもっていい場所」を届けようとしている。

「がんばって教室にいなさい」ではなく、「10分休んだら戻れるなら、その10分を保障しよう」。そんな発想の転換が、ダンボールの小さな箱に詰まっています。

カンコー ポピールーム

【サイズ】幅106×奥行95×高さ165cm
【素材】強化ダンボール製(工具不要で組立可能)
【価格】200,000円(税別・送料込み/北海道・沖縄・離島は別途)
【納期】注文から約1カ月
【推奨設置場所】小・中・高校、特別支援学校、保健室、相談室、学習支援室、放課後児童クラブ、フリースクールなど
【展示体験会】2026年8月20日(木)13:00〜18:00/東京都中央区東日本橋(現地のみ)
【特別講演会】同日16:00〜17:15「感覚過敏と学校生活」加藤路瑛氏登壇(オンライン同時配信・参加無料)
【対象】全国の教員
【申込締切】2026年8月17日(月)
【公式サイト】感覚過敏研究所 カンコー ポピールーム

Top image: © 菅公学生服株式会社
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。