生理を「記録する」から、身体を「測る」へ。松本山雅FCが挑む経血バイオ解析
レッドボックス株式会社と松本山雅FCが、Jリーグクラブとして初めて「経血」を使った女子アスリート向けコンディショニングサポートを開始すると発表しました。
毎月、生理用品に吸収されてそのまま捨てられてきたもの。それが実は、選手の体の状態を映し出す「宝の山」だった——そう聞いたとき、正直に驚きました。
「なんとなく不調」を数値に変える技術

このプロジェクトの核になっているのは経血プロテオミクス解析と呼ばれる技術です。
少し噛み砕くと、経血に含まれるタンパク質や代謝物を網羅的に測定して、選手一人ひとりの体の状態を分子レベルで読み取るというもの。
注目すべきは、採血が不要だということ。痛みを伴わない方法で、貧血リスクや酸素を運ぶ力、筋肉の疲労度、炎症の有無、免疫の状態まで多面的に把握できるといいます。
これまで女子アスリートのコンディション管理は、生理管理アプリなどを使った「自分の感覚」に頼る部分が大きかったのが実情です。
「今日はなんとなくだるい」「いつもより重い気がする」。そうした主観的な申告を、客観的なデータに置き換えようとしている点が、このプロジェクトの本質ではないでしょうか。
トイレの生理用品設置から5年、「信頼」が科学を動かした
実は、REDBOXと松本山雅FCの関係は今回突然始まったわけではありません。
両者の連携は2021年にさかのぼります。最初の一歩は、スタジアムの女子トイレに生理用品を常設するという、とてもシンプルな取り組みでした。
その活動はJリーグの社会連携活動を表彰する「シャレン!アウォーズ」で評価され、2023年3月には松本市内の177施設・20校への生理用品寄付にまで広がっています。
「生理用品を届ける」から「経血を科学的に解析する」へ。一見すると大きな飛躍に見えますが、5年かけて地域と選手との間に築いた信頼があったからこそ、身体のもっとも繊細な領域に踏み込めたのだと感じます。
選手は「データを渡す人」ではない
もうひとつ、このプロジェクトで見逃せないのは教育的な設計です。
選手自身がサンプルの採取から温度・衛生管理、専門ラボへの発送、さらにはデータのダッシュボードの読み解きまで主体的に関わる仕組みになっています。
つまり、選手はただ検体を提供する側ではなく、自分の体を自分で理解し、栄養や疲労の管理を自分の言葉で説明できる人になることが目指されています。
この力は、競技を引退した後のキャリアにも活きるはずです。
REDBOXはさらに、この実証を足がかりに「アスリート・バイオパスポート」という構想も掲げています。女子アスリートが生涯にわたって自分の生体データを安全に蓄積・活用できるインフラをつくるという壮大なビジョンです。
月経は、日本の女性のおよそ半数が日常的に経験している身体の現象です。「毎月やってくる不調」を、ただ耐えるのではなく、自分を知る手がかりに変えられるかもしれない。
その可能性は、アスリートだけのものではないはずです。
【採取キット内容】月経カップ、採取容器、スポイト、ピペット、綿棒、乾燥剤、保存用袋
【公式サイト】レッドボックス






