完全オーガニックな「学校給食」が登場。石川県・はくい市が全国初の試み
あったかいごはんに、菊イモと人参のきんぴら、能登の里山汁。堪らず舌先が“しっとり”してくるこの献立。2016年1月29日、石川県羽咋(はくい)市内の小中学校で実際に振る舞われた、これは給食です。
この日、児童・生徒1,445人が、全国で初となる「自然栽培」を取り入れた給食を口にしました。
無農薬、無肥料、無除草剤
完全オーガニックの給食
この“特別な献立”は、1月24日から30日の「全国学校給食週間」にちなんで、羽咋市が「JAはくい」とのタイアップで企画したもの。いったい、何が特別だったかといえば…子どもたちが食べた給食は、無農薬かつ化学肥料も使われていない、土に備わった自然の力のみで育てられた米や野菜。つまりは完全オーガニックな食材を用いた給食だったから。さぞかし美味しかったことでしょうね。
これらはすべて自然栽培で育てられた食べ物。こう聞いて「?マーク」が頭の上に浮かぶ人のために、ちょっとおさらいをしていきましょう。
土のパワーだけで育てる「自然栽培」とは?
※画像はイメージです。
「オーガニック」を唱う食品のなかには、無農薬だけど化学肥料を使用しているものがあります。「有機」と「無農薬」においても栽培された農地に関する細かな違いがあるなど、きちんと分類していくと、意外にこれらの解釈って難しい。
一方、自然栽培の定義がこちら、「無農薬、無肥料、無除草剤」であること。純粋に大地が持つ自然のエネルギーを活かすことを基礎とした農法なのです。土にも種(や苗)にも、本来持つ生命力をいかんなく発揮できる環境づくりを整えてあげる。それだけに、大変手のかかる農法でもあるようです。
農家始めませんか?
市からの手厚い営農支援
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こうした土壌づくりも農作物の生産も難しい食材を給食に用いたのには、もちろんワケがあります。でも、その前にあるチャレンジに目を向けてみましょう。
羽咋市は、独自に「自然栽培新規就農者支援」という、農業従事者への画期的な支援制度を導入しました。自然栽培に共感し、この土地で新しく農家を始める人に対し、農地の紹介や作業機器の買い上げ支援、空き家の斡旋、助成金の交付など、国の補助に上乗せした手厚い営農支援が受けられるという制度です。
市とJAがタッグを組んで、自然農法を志す農家を地域でサポートしていく体制が整っているーー、それがこの根源的なオーガニック栽培を地域ブランドにしたい羽咋市の思惑でもあるのです。
「地方創生」の切り札に
こうまでして、羽咋市が自然栽培の普及に力を入れる理由。余喜小学校を訪問し、生徒と一緒に給食を食べた山辺芳宣市長はこう語りました。
「農業といえば、これまで生産量が重視されてきましたが、最近は量より質。自然栽培は安全性を追求しており、質の面でトップに立てると考えています」
地方創生の要となりえる事業として、これまで自然栽培に取り組んできた羽咋市が、学校給食に自然栽培した米や野菜を出す。全国に先駆けたこの試みが、「石川の食文化に自然栽培野菜あり」を印象づける布石を打ちました。
地産地消という概念に加え、より安全な土着の味をかみしめる。こうした食育への取り組み、全国に広がっていくといいですね。
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