日本のかわいいおみやげ#16 石川・金沢の「オトギクヅユ」
金沢にある、江戸時代末期の嘉永二年(1849年)から170年に渡り和菓子屋を営んでいる老舗・諸江屋には、それはそれは「乙女心をくすぐる葛湯」があります。
それが、「オトギクヅユ」。
「葛湯」は昔からあって、風邪を引いたり体調のよくない時にごはんの代わりに飲んだりもしていたもの。優しい甘さで、寒い朝や夜に体を温めるのにもおすすめですが、腹持ちもいいので、ダイエット中の人や、年末年始の暴飲暴食で体が弱っている人にプレゼントするのもいいかもしれません。
ちょっと版画風のデザインが
かわいいです
「オトギクヅユ」は、一杯分ずつ小分けになった葛湯のもとが、おとぎ話が描かれた小さな箱に入れられています。
諸江屋には昔、「オトギシルコ」という商品があって、そこには、食べながら楽しんでもらうための読み物として「おとぎ話のしおり」が入っていたんだそうです。その後、今度は葛湯を作りたいねとなった時に、この商品を思い出し、包装をおとぎ話のデザインにしよう!と言って出来たのが、「オトギクヅユ」の始まりなんだとか。
おとぎ話のラインナップは「桃太郎」、「カチカチ山」、「金太郎」、「花咲か爺さん」の4種類。桃太郎は仲間が全員集合し、いよいよ鬼退治へ向かうシーン。金太郎は熊を投げ飛ばし、花咲か爺さんは枯れ木を満開にし、意地悪だぬきの背中からは火が。いずれもお話の名場面ですが、これらがちょっと版画風のかわいいデザインになっていて、眺めているとほっこりした気持ちになってきます。
中の葛粉を器にあけてみると、さらに中から小さな「焼き餅」が出てくるのですが、じつはこれも花咲か爺さんの「さくら」とか、桃太郎の「桃」とか、4種類あるお話に関係したモチーフになっています。その中から、ランダムに2個ずつが一袋に入っているので、どれが入っているかは開けてみてのお楽しみ。かわいいだけでなく、焼き餅の香ばしさが味のアクセントにもなっています。
箱の絵や焼き餅のモチーフを眺めるのとともに、「どんな話だったっけな〜」と思い出しながら葛湯を飲むのも楽しいかも。
多めのお湯でサラサラ
少なめのお湯ならモチモチに
葛湯のもとである「葛粉」は、葛というマメ科の多年草の、塊根に含まれるデンプンを精製して粉にしたもの。葛湯は、これをお湯で溶いて食べるのですが、多めのお湯で作れば飲み物になるし、少なめのお湯で作ればお餅のようなモチモチ感を楽しむこともできます。
せっかく作るのだから美味しいものを作りたいと、諸江屋では熊本を中心に九州の方から葛粉を仕入れているんだとか。
そういえば、風邪のひき始めに「葛根湯」を飲む人も多いと思います。葛根湯も「葛」の根っこを生薬として作られた漢方薬。滋養があって、あったまって、喉が痛い時なんかにもいいと言われて重宝されていますが、葛湯にも、腸を整えてくれるなんて話もあるそうですよ。
諸江屋の「オトギクヅユ」、かわいいだけじゃない実力の持ち主かもしれません。金沢にある諸江屋の本店と、オンラインショップで購入出来ます。8個入りの箱が、本のようになっているのもかわいい〜。