クラフトビールにネクストウエーブ。「食品廃棄ゴミ」からつくるビール
小規模なビール醸造所で職人たちがつくるクラフトビール。狂乱ブームの波が過ぎコーヒー人気のように、ようやくスタイルやシーンに浸透してきた日本。けれど、海外では早くもネクストビールの新たな波が押し寄せようとしている。
キーワードは「ゼロ・ウェイスト」。時代が求めているのは、持続可能なビール生産じゃない?
世界初のゴミビール材料は、腐った洋梨に売れ残りのクロワッサン!?
英リーズのクラフトビールメーカー「Northern Monk Brewery」が衝撃的なビールを開発した。ボトルにラベリングされた文字「WASTED」から読み取れるように、原料には廃棄処理されるはずだった食べ物が使われているというのだが……、その中身がすごかった。
売り物にならなくなった腐りかけの洋梨に、売れ残ったクロワッサンやブリオッシュ。そこにホップ、麦芽、イースト菌を加えた、廃棄食品を使った世界で初めての洋梨のエールだ。
実際に試飲した人のコメントを「The Guardian」が紹介する。曰く、信じられないくらいバランスが取れていて、わずかな果実味を感じるんだとか。
製造工程の食品ロスに着目
The Real Junk Food Projectが
全面サポート
それにしても、廃棄食品をクラフトビールに生かす目的はなんだったのか?「Metro」に掲載された、Northern Monk Brewery創設者Russell Bisset氏の発言に、そのヒントが見えてくる。
──ビール醸造においても当然ながら、ゴミとなり廃棄されるものがあるけど、それを変えていきたい。ビールの原材料のどこにムダがあるかを暴くためにもね。
食品ロス削減の世界的潮流にクラフトビール業界からもできることがあるはず。と、地方都市の小さなブルアリーが果敢なチャレンジに挑む。その強い意志に心を動かされ、タッグを組んだのが「The Real Junk Food Project(TRJFP)」だ。
“Pay As You Like(金額はおまかせ)”、賞味期限切れの食材のみを用いたカフェを開業し、まだ食べられるものを捨てずに使う試みで、現代社会に一石を投じたTRJFP。奇しくも、同じリーズをホームグラウンドに活躍する両社の思惑がひとつになったビール。それが「Wasted」。
クラフトビール界の新たなトレンドに?
──食品廃棄を世界からなくしていくための足掛かりは、ローカルから発進する持続可能な取り組みが不可欠なんです。
とは、TRJFP急成長の立役者Adam Smith氏の言葉。地域に根ざした小規模なビール醸造所、その特性をフルに活かし、誰も考えつかなかったプロダクトに仕上げてみせた。
ゴミ(となるはずだったもの)からつくるビールは、同時にゴミを出さないビールでもある。醸造過程で使われたホップや麦芽カスは、ただの一つも廃棄せず地元農家へと寄付するルートが確立されている。堆肥として再利用ができるからだ。もちろん、ガラスボトルも100%リサイクル可能なもののみという徹底ぶり。
ムダを生まない工法であったり、より持続可能な原料を用いるなど、クラフトビールの次なる波がすぐ近くにまで来ていることを感じないだろうか。