クラフトビールを味わうなら、美味しい相棒をみつけよう。

小さな醸造所で、職人さんが手間暇かけてつくるクラフトビール。麦芽の種類や醸造方法、ひとつひとつにこだわりを持って、「おいしい」のため息まで、責任を持って届けてくれる。その愛情に触れたとき、嬉しさがじわっとこみ上げてくるのだ。毎日色々なお客様がやってくる。今日はどんな味を届けよう?こんな思いが込められて、丁寧に仕上げたビールだからこそ、とにかく美味しいのだ。そして、その魅力を引き出すおつまみと出会ったとき、ビール本来の美味しさに気づかされるだろう。都内でとびきりの組み合わせを堪能できる、5つのお店を紹介する。今の気分にぴったりな一杯を見つけて、ゆったりと味わってもらいたい。

01.
どれもとにかく美味しい。
並々に注がれた愛情と一緒にいただこう。
麦酒倶楽部 POPEYE(両国)

相撲観戦を楽しんだら、極上の一杯を飲みに行こう。国技館から両国駅の西口方面に歩いて6分。32年もの歴史がある『麦酒倶楽部 POPEYE』の入り口には、大きなフラッグ<70BEER ON TAP>が掲げられている。「ガスのバランスをしっかり計算して調整すれば、泡なしでもありでも、自在に操ることが出来るんですよ。」店長の城戸さんはそう言って笑った。それぞれのビールに合わせて、温度やガスの圧力を、全て緻密に計算している。美味しさの信頼はここにあるのだ。

たくさんのビールの名前が書かれたメニューを見ていたら、時代を超えて愛されているビールは一体どんな味なのだろうと気になった。店主に「一番愛されているビールをください」とオーダーすると、迷わずゴールデンスランバーを注いでくれた。自家製ビールの第一弾としてつくられてから、ずっと変わらない定番の味だそうだ。

こぼさないように気をつけながら味わうと、口当たりが優しく、麦芽の甘みがいきていることが感じられる。さらさらと飲みやすいけれど、ホップの苦さもしっかりと広がって、喉越しが滑らかなのだ。一緒にじゃがいもを帯状にうすく剥いて揚げた、インパクトあるスネークポテトチップスも注文してみた食べた瞬間に、パリッと美味しい音が響く。ビールと交互に味わうと、たちまちやめられなくなってしまう。

店内へ入ったら、天井に並べられたたくさんのグラスを見てもらいたい。ビールの種類によって、口あたりがベストなグラスが異なるのだそうだ。大・小と2サイズから選べるから、すぐにお腹いっぱいにならないよう、自分で調節しながら飲むことができる。ビールの種類に、飲み方のバリエーションも加わるとなると、いつか全制覇することを夢見てしまう。そう思った時にはもう、虜になっているのかもしれない。友人や家族と、わいわい飲み比べをしながらお気に入りを見つけるのも楽しそうだ。

麦酒倶楽部 POPEYE
住所:東京都墨田区両国2-18-7
電話:03-3633-2120
営業時間:17:00~23:30(ラストオーダー23:00)
祭日、祝日は15:00~営業
休:日曜日

02.
新宿の景色も、醸造の様子も、
なにもかもがご馳走だ。
Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchen(新宿)

住宅街を歩いていると、オフィスビルの一階に、突如としてカフェのような『Y.Y.G .Brewery & Beer kitchen』が現れる。一歩足を踏み入れると「うわあ、すごい!」思わず声をあげてしまった。席の目の前に醸造所があり、ビールが作られる様子が広がっていたからだ。「いらっしゃいませ」笑顔で迎えてくれるスタッフが、ビールの仕込みから「おいしい」のため息まで、真心込めて届けてくれる。今日はどのビールにしよう。贅沢に迷ってしまう時は、職人さんに聞いてしまうのが一番だ。

定番メニューの新宿ペールエールは、一口飲んだ瞬間、コクのある麦芽の甘さが広がる。キンキンに冷やすのではなく、常温に近い冷たさで届けてくれるのは、味をより鮮明にさせるため。透明度が高いから、光に当たると黄金色がキラキラと輝いて、ビールとは思えないくらいにとても綺麗だ。炭酸も最小限に抑えているので、口当たりが柔らかく、ビールが苦手な人でもさらっと飲みやすい。「本来の旨味を味わって欲しい」という思いを、まるごと感じることが出来るのだ。

エレベーターで7階へ上がり、シックな黒い扉を開けると、ビルの一角とは思えないくらい開放的で、自然光の差し込むレストランが広がる。メイン料理の前にまず注文したいのは、サクサクに揚げられた、カキフライのようなハラペーニョポッパーズだ。一口かじると、ビリビリするような辛さが全体に広がっていく。中に詰められたベーコンとホワイトソース、チェダーチーズの旨味もじゅわっと広がって、美味しくてたまらない。タルタルソースの量はお好みで。辛さの熱を感じながら、ビールの喉越しを感じよう。

Y.Y.G. Brewery & Beer kitchen
住所:東京都渋谷区代々木2-18-3 オーチュー第一ビル
電話:03-6276-5550
営業時間:1階
     月~金 17:00~23:30(L.O.23:00) 
     土・祝祭日 12:00~23:30(L.O.23:00)
     日 12:00~21:00(L.O.20:30)

     7階
     月~金 18:00~23:30(L.O.23:00)
     土・祝祭日 12:00~23:30(L.O.23:00)
休: 日曜休(7階のみ)

03.
手作りのパンこそ、
同じ麦から生まれたビールの相棒と言えるだろう。
good sleep baker(世田谷)

世田谷のちょうどまんなかあたり。ゆっくり街中を走る東急世田谷線に揺られ、松陰神社前駅で降りてすぐのところに松陰PLATは建っている。街のプラットフォームとして作られた商業施設で、屋根の上にはためく白い旗が目印である。カフェのような佇まいの『good sleep baker』は、その一角にある。

もともと、パンとお菓子の勉強をしていたという店主の小林由美さん。のちにビールの勉強を始め、当時通っていたビアパブで、クラフトビールの種類の豊富さに魅了されていったという。美味しいパン屋さんというのは、なかなか夜遅くまで開いているものではない。であるならば、仕事帰りの美味しい一杯とともに、美味しいパンもあったらどうだろうと思いついた。新宿や渋谷など大きな街でないからこそ、気軽に足を運べ、気負わない心地良さを提供できるのだ。

ビールは常時、3種類用意している。店主が実際に味わって、ほんとうに美味しいと思ったものや、味わいたいと思ったものを、樽ごとに入れ替えて置いているのだ。訪れるたびに新しいビールと出会えることも、楽しみのひとつ。この日のビールは、山梨県・甲府市で作られたザ・カウンティーズ・ペールエール。小腹がすいていたらパクチーベーコンと一緒にいただこう。ごま油を塗って焼き上げているので、パクチーの独特な風味が苦手な人にこそ、おすすめしたい。入り口に掲げられたフクロウは、夜の鳥であり、希望の鳥でもある。一度足を運んだら、たちまちこの店のファンになってしまうだろう。

good sleep baker
住所:東京都世田谷区世田谷4-13-20-1-D
電話:050-7128-3201
営業時間:17:00~翌1:00、15:00~23:00(日曜)
休:水曜

04.
インド人が作る本場の料理との、
斬新な組み合わせを楽しんでもらいたい。
SPICE DINER(溜池山王)

オフィスビル・山王パークの地下2階を歩いていると、赤い鼻の大きなにこちゃんマークが現れる。何のお店だろう、と思って足を止めると、開いた窓からカレーのにおいが漂ってきた。クラフトビールとインド料理という、ちょっと珍しい組み合わせを味わえる『SPICE DINER』だ。

ドアを開けた瞬間、ふわっと漂ってくるのはスパイスの香り。温かみのある赤色で統一された店内は、現地のレストランにいるような感覚になる。ちらりと厨房を覗いてみると、インド人のコックさんたちが真剣な表情でフライパンを握っている。私の視線に気が付いて目が合うと、にっこりと優しく微笑んでくれた。

神奈川県生まれの湘南ビール ピルスナーは、一口飲むと麦芽の香ばしさと苦味がブワッと広がる。すぐに「あ、飲みやすい」と感じるのは、重めの喉ごしのあと、鼻を抜けるふんわりした甘い香りが苦味を包み込んでくれるからだ。そのまま、揚げ餃子のようなサモサにかぶりつくと、ピリッと舌を刺激する辛さが加わって、両方のうまみを同時に味わえる。ふかしたジャガイモにスパイスを練りこんで、ナッツやレーズンを一緒に包んで作られた食感が、もちもちしていて新鮮だ。

SPICE DINER
住所:東京都千代田区永田町2-11-1山王パークタワーB1
電話:03-5521-0005
営業時間:11:30〜15:00 (L.O.14:30)
     17:00〜23:00 (L.O.21:30)
休:土曜・日曜・祝祭日

05.
野菜のフレッシュな美味しさが引き立つ、
クラフトビールの存在感。
NIHONBASHI BREWERY. (馬喰横山)

都営新宿線の馬喰横山駅を降りて、東日本橋の街をしばらく歩くと、大きなロゴが目に飛び込んでくる。ショウルームなどの入ったオフィスビルだ。けれどもその1階に「ビールのお店」と手書きの看板が立て掛けられているのを、見逃さないでほしい。『NIHONBASHI BREWERY.』である。

「IPAだけどそんなに苦くないですよ。」と注いでくれた定番のNIHONBASHI IPAは、フルーティーで口当たりがマイルド。その理由を店主に尋ねると、ポートランドの醸造長が、日本人向けに特別につくったビールであることを教えてくれた。苦味の強いIPAが苦手でも、これなら美味しくいただけるだろう。飲みやすく、サイズの小さいグラスも揃えているから、女性のお客さんが多いのにも納得してしまう。 

果物のようなフレッシュな甘みのあるピクルスは、塩分を使わずに漬けているから、素材そのものの風味を存分に味わうことができる。みょうがのピクルスのみょうがらしからぬ香りは、隠し味の柚子のおかげだ。フルーティーな香りが鼻を抜けて、こんなに美味しくなるなんて、なんだかずるいと思ってしまった。最後にエクストラ・ヴァージンのオリーブ油をまわしかけるのは、柔らかい酸味に仕上げてくれるからだそう。「みょうがじゃないみたい……」ついつい箸がすすんでしまう。

NIHONBASHI BREWERY.
住所:東京都中央区日本橋富沢町10-13 &WORK NIHONBASHI 1F
電話:03-6231-0226
営業時間:11:30〜23:00
休:不定休(日曜営業)

06.
つくり立ての一杯を、
そのまま家に持ち帰ることができる。
高円寺麦酒工房(高円寺)

はしゃぐ子供たちや、買い物帰りのお母さんたちとすれ違う住宅街を歩いていく。こんなところにクラフトビールを出すお店なんてあるのだろうか?そう思いながら小さな本屋さんを通り過ぎると、フォトスタジオの看板に気がついた。街のビール屋さん『高円寺麦酒工房』がオープンしたのは、今から約6年前のことだ。

入り口から中を覗くと、忙しなくビールの仕込みをする店主の姿が見える。ログハウスのリビングのようにどこか懐かしさを感じる店内は、壁も机も、社長である能村さんと奥様によるもの。店内は、温かく甘いアルコールの匂いに満ちている。この匂いは、ホップを煮ている時のものだと教えてもらい、ぽかぽかした店内の暖かさにも納得した。手づくりの温もりが心地よい。

食べものが最も美味しいのは、やはり作りたてだろう。パンなら焼き立てを、お肉ならジューッと音がするうちに食べたい。「ビールも同じです。出来立てホヤホヤで、酵母が最も生き生きしているとき。その瞬間に、グビッと飲んでもらいたいんです。」ぶ厚いベーコンを、網の上でじっくり焼く。熱々をはふはふしながら頬張り、ブロンドをグビッとひと口。優しい喉越しに、じわっと幸せが広がっていく。

美味しいビールは、出来たら大切な人と一緒に飲みたい。それが大好きな家族とだったらなおのこと幸せだ。「自宅のリビングで、家族とテレビを見ながら飲みたい」ある時、こんな声を聞き、それならばと持ち帰りが出来るよう、2年前からテイクアウトのサービスをスタートさせた。出来立てが美味しいのはもちろんだけれど、いつだってお客さまに寄り添った美味しい一杯を提供したい。マイタンブラーならぬ、マイ樽を持って麦酒工房に足を運べば「直接接客出来ないから」と、一割引でビールを注いでくれる。この愛情は、街の人から人へと伝わっていくだろう。

高円寺麦酒工房
住所:東京都杉並区高円寺北2丁目24−8
電話:03-5373-5301
営業時間:17:00〜23:00(水〜金)
     12:00〜21:00(土・日・祝日)
休:月・火

ビールは、どんな場所でいただくのが、いちばん美味しいだろう。それは、高品質にこだわるだけでなく、職人やスタッフからの「笑顔で帰ってもらいたい」という思いが満ちている空間ではないだろうか。
「おいしい」とは、一体なんだろう。お店に来てくれる人のことを思って、丁寧につくられた料理やビールを味わうと、心の中に嬉しさや温かさが広がっていくのを感じる。そんな幸せな瞬間に、明日も頑張ろうと思えたり、たとえ遠くてもまた足を運びたいと思う。「おいしい」は、記憶に染み付く幸せな瞬間を、与えることなのかもしれない。 

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。