文化遺産を3Dアーカイヴ。制作チームが見据えた未来とは?

今回紹介したいのは、とある「地方」と気鋭の「クリエイター」、そして「企業」の三者がタイアップし、VRやドローンといった最新技術を用いたプロジェクト。その名も「旧門司税関文化遺産×VRプロジェクト」だ。

歴史的文化遺産を
最先端の方法でアーカイヴしたい

天災の多い日本において、歴史的な文化遺産の保存は予てからの課題だ。昨年の熊本地震の際、熊本城の石垣が大きな被害を受けたのも記憶に新しい。

今回のプロジェクトの意義は、歴史的文化遺産のデジタル・アーカイヴ。より多くの情報を保存できるデジタルで、最先端のアーカイヴを試みるというものだ。

制作を担うのは、日本初のフォトグラメトリー・スタジオを開設した桐島ローランド氏率いる「AVATTA」。マウスコンピューターがクリエイター向けハイスペックPC「DAIV」の機材提供とバックアップを行い、プロジェクトは走り出した。

アーカイヴの手法はこうだ。文化遺産の外観をドローン飛行によって撮影。内部は、レーザースキャンとフォトグラメトリーでデータを取得したのち、3DCGの編集を経て、3D-VRコンテンツにするというもの。

しかし、肝心の舞台がなかなか決まらなかった。まだまだドローンなどの最新技術の持ち込みに、腰が重い行政はとても多い。文化遺産となると尚のことだ。様々な制約条件があり、20件以上の候補は全てNG。だが、文化遺産でないとやる意味がない。そんな中ようやく、北九州市にある「旧門司税関」からGOが出たのだ。

このプロジェクトに舞台を提供した北九州市の担当者・岩田 健さんに、話を聞いてみた。

「他がやらないことをやらないと、
生き残れないから」

岩田 健さん/北九州市 地方創生推進室 地方創生推進担当課長

岩田さん:やはり最初にお話をいただいたときは、旧門司税関もドローン飛行には慎重でした。だけど、この最先端の取り組みは北九州市にとって取り組む価値のあることだと思ったんです。計画書とともに港湾空港局の担当部長に掛け合って、特例的に撮影の許可を取り付けました。

ーーリスクもあった中で、「取り組む価値がある」と思えたのはなぜですか?

岩田さん:北九州市って、地味でしょう?良いところはたくさんあるのに、強い印象がないんです。別の視点で考えていかないといけないと、いつも考えていましたね。3D-VRというのはそういう意味で、新しい視点でした。桐島さんと組むということも刺激的でしたね。中にいたら気づかないような視点を、たくさんもらいましたよ。

「文化遺産の保護だけだったら、
ボクはこの仕事、してないかも(笑)」

ーー文化遺産の保護という意義の存在も大きかった?

岩田さん:もちろんあります。でもそれよりももっと、このVRコンテンツを作った先の展開に、無数の可能性があると思ったんですよ。文化遺産の保護だけだったら、ボクはこの仕事をしてなかったかもしれない(笑)。

ーー具体的にはどんなことを視野に入れているんですか?

岩田さん:まだまだ何も決まっていないけれど、例えば、クリエイター誘致や若者の移住促進には活かせると思っています。他にも、企業私有地のために一般の方が立ち入ることが出来ない世界遺産があるんですよ。それが3D-VRで再現できたら、観光資源としても面白くなりそうですよね。若い人たちにとって、北九州市がもっと“こんなこともやっていい街なんだ”っていうポジティブな印象になったらいいな、と思っています。

ーーもはや、「文化遺産のアーカイヴ」だけに留まらないと。

岩田さん:いつもチームで話していたことは、これが成功したら、いろんな社会に波及する効果があるはずだってことですね。いろんな意義を残せるプロジェクトにしたい想いは一緒でした。これによって無闇なドローン規制も緩和されるかもしれないし、若いクリエイターにもいろんな表現の可能性や、舞台を用意できるようになると思うんです。

大変なこともありましたが、やってよかったですね。このチームだったからこそ、そう思えると思います。

 

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「地方」×「クリエイター」×「企業」。三者のタイアップによって実現したこのプロジェクトは、単なる文化遺産のアーカイヴという枠を越えたものになっていた。閉塞感を切り開く「地方」と、新しい表現を追求する「クリエイター」、最先端の技術開発で可能性を広げる「企業」がチームを組むことで、まだまだたくさんの展望が期待できそうだ。

プロジェクトの様子は、WIRED特設サイト、こちらのメイキング動画からも見ていただける。

技術面を支えたパートナー
「DAIV-Dシリーズ」

このプロジェクトを技術面で支えたのは、「クリエイターによる、クリエイターのためのPC」を謳うマウスコンピューターの「DAIV-Dシリーズ」だ。相当量のデータを扱う必要がある3D-VR化の工程においても、快適な作業を実現し、力強いパートナーになった。

必要な機能をカスタマイズできるので、価格とスペックのバランスが非常に良いと、最前線で活躍するクリエイターたちからの信頼も厚い。きっとあなたの優秀な右腕にもなってくれるのではないだろうか。