セーヌ川のほとりに「死んだクジラ」が打ち上がった意味

穏やかな週末を過ごす人々が行き交うパリで、セーヌ川に突然打ち上げられた「クジラの死骸」。その生々しさに、花の都でどよめきが起こりました。

クジラの周りでは、防護服を来た作業員が撤去作業を進め、見慣れない異様な光景に街の人も観光客も、視線は釘付けに。

海にいるはずのクジラが、なぜこんな場所で息絶えてしまったのか…。

生態系の危機を訴えるために

一瞬でもホンモノと思ってしまった人はごめんなさい。実際は、オランダの芸術集団Captain Boomer Collectiveによるインスタレーション作品でした。

18mにもなる巨大なマッコウクジラの彫刻は非常に精巧なつくりで、まるで本当に川を上ってきて息絶えたかのようなリアリティがありますよね。その屍の周りの作業員まで。

日頃、ニュースでしか見たことのない「巨大な海洋生物の死」という光景が、現実として飛び込んできたことにパリの人々は驚き、多くの人の視線が集まったというわけです。

「リアルなクジラの彫刻をセーヌ川のほとりに置くことで、日頃向き合うことのない環境問題に意識を向けて欲しい」

Captain Boomer Collectiveの狙いがそこに。

実際、世界中の海岸でクジラやイルカが数多く打ち上げられているという事実があります。その原因はまだ明らかになっていませんが、人間の活動が環境になんらかの影響を及ぼしているとも。

普段は遠い世界のことだと思っていても、目の前に横たわったクジラが現れたら、環境について考えずにはいられないでしょう。たとえそれが模型だったとしてもです。 

Captain Boomer Collectiveはこれまでにも、ロンドンやバレンシアなどで同じように、海辺や川にクジラの彫刻を置くことで人々に環境保全を訴える運動をしてきました。

チームにはクジラについて研究を進める科学者も所属しており、集まった人により深くクジラの生態について知ってもらえるよう解説もしているそうです。

まずは模型のインパクトで人の心を引きつけ、大きな話題を生む。さらにそのとき感じたことを深く掘り下げ、今自分たちに何ができるのかを考えてもらうことだと言います。

※本記事では、一部誤りがあったため訂正を加えております(2017/08/01 17:30)

Licensed material used with permission by Captain Boomer Collective
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