「日はまた昇る」って、ポジティブな意味じゃないからね。

音楽、映画、文学など、誰にだって心のよりどころとしている作品があるはず。そんな“オール・タイム・フェイバリット”を探る週替り連載企画。前回につづいてロック・バー『ジャニス』のマスターおすすめは、ヘミングウェイの小説『日はまた昇る』です。え、知らないって? では、梅村さんにその魅力を聞いてみよう。

フェイバリット紹介者:梅村 勉 さん

東京・阿佐ヶ谷にあるロックカフェ・バー『ジャニス』のマスター。

昔、軽井沢のレンタル自転車屋さんでジョン・レノンと遭遇した過去あり。

(声をかけたものの、ジョンは颯爽と自転車で走っていってしまったそうです)

#FAVORITE 02.
アーネスト・ヘミングウェイ
『日はまた昇る』(小説)

 

梅村:高校生のとき、英語の授業の一貫で映画を観たんです。それがヘミングウェイの『誰が為に鐘は鳴る』だったんだけど。これだけ短い期間の話を、圧倒的なスケールに広げて映画にしているのがすごいなと思ったし、おもしろかったんだよね。すぐにその原作の小説も読んで。それからヘミングウェイの小説にハマったんだよね。

 

——その流れで『日はまた昇る』を読んだわけですね。

梅村:そう。彼の作品のなかでも、一番好きな作品。高校生のころに読んだんだけど、勉強もせずに、自堕落な生活をしていた当時の自分に重ねて読んでいたんだよね(笑)。自分より全然大人のひとたちの話だったんだけど、主人公に共感できるところがあったのかな。彼も自堕落な生活を送っていて、好きになった女性ともうまくいかなくて。そういうところで終わっちゃうんだけど、なんかね。わかるような気がして。あんまりハッピーエンドじゃないんだけど、かといって絶望的でもないところも好きだったな。

 

 ——この作品に限らず、そういう作品が好きですか?

梅村:わりとそうだね。なんだろうね。なんかね、ひねくれてるところがあったのかな、昔からね(笑)。なんとなくね。だから、三島由紀夫の『午後の曳航』とかも好きだし。ずっと記憶に残るのはそういう作品が多いかな。

 

 ——作品のタイトルからは、ポジティブな気配を感じますが。

梅村:『日はまた昇る』ね。このタイトルって、物事が再生して良くなっていくようなイメージがあるでしょ? でも全然違う。自分の生活を変えなきゃいけないなと思いながらも、それができない。そして日々はつづいていく、と。そういう意味での “日はまた昇る” なんです。この終わり方も、なんか気に入っちゃったんだよね。やっぱり、ひねくれているところがあるからね(笑)。

 

今日のみじかいことば。

「ヘミングウェイの作品ってちょっとキザなところがあるんだけど、ハマるとハマるんだよね。藤竜也が作詞、エディ藩が作曲の『横浜ホンキー・トンク・ブルース』っていう歌の中にもでてくるんだよ、“ヘミングウェイなんかにかぶれちゃってさ”っていう歌詞が(笑)」

『陽はまた昇る』〈特別編〉 

DVD発売中(20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン)

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※今回のフェイバリットは “小説” ですが、上記作品より画像をお借りしました。

次回につづきます。前回のファイバリットはこちら

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。