「赤く染まる海」を知らないなら、本当の沖縄好きとは言えない。

彼方の水平線で晴れわたった空と同化する「青」、眩しい太陽の光と水がおりなす「エメラルドグリーン」、見ているだけで心が穏やかになる「ターコイズブルー」。沖縄が誇る海を嫌う人は、まずいないでしょう。

しかし、今、そんな美しい海が人気の沖縄が抱えているのは、海が赤色に染まってしまうという問題なんです。

沖縄文化を育んだ「赤土」が
島の海を汚しているリアル

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本来は透きとおるような海を濁らせている正体、それは「赤土」。これ自体は、沖縄の豊かな自然を育む大地の一部であり、たくさんの人にとって身近なものです。例えば、シーサーや屋根瓦の材料として使われ、沖縄独自のユニークな島文化を育んだ重要な要素のひとつでもあります。

また、島の名産品であるサトウキビやパイナップルなどの農作物の栽培を支える土壌としても活躍。だけど、そこに大雨や台風がやってくると、畑から川へ、川から海へと赤土が流れてしまいます。これが、きれいな青い海がくすんだ赤色に染められてしまう主な原因なのです。

しかも、赤く染まった海は景観が悪くなるだけでなく、海の中では赤土がカバーのようにサンゴに覆いかぶさり、最悪のケースでは死滅してしまうことも。さらに、藻類の光合成の邪魔にもなってしまうし、エサを探しにくる魚にもネガティブな影響があります。

とは言っても、その現象は最近起こり始めたことではなく、社会問題として取り上げられ始めたのは昭和50年頃。そう、ちょうど沖縄が日本に復帰したあたりまでさかのぼります。その後、これまでに実施された多くのプロジェクトによって、流れ出る赤土の量は減っています。でも、あの心が奪われるように広がる「海」と「サンゴ礁」を取り戻すためには、まだまだ十分ではありません。

赤土をせき止めるのは
緑で作られた「自然のフィルター」

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ここで一度おさらいをすると、赤土が海にたどりつくワケは、雨による水の流れ。そして、流れ出る赤土のほとんどが畑から流出しています。これにストップをかけるべく注目されているのが「グリーンベルト」という対策。

ざっくりと説明すると、畑の周りに特定の植物をうえることで、外に出ようとする土を〝自然のフィルター〟でせき止め、水だけを流すというもの。これには月桃やハイビスカス、ベチバーといった植物がよく使われています。中でも、背の高いベチバーには防風効果もあり、相当量の赤土の流出を抑制できるそう

しかし、この方法には大きな問題も。それは、様々な事情により、農家の方たちの協力を得られない場合があるということ。もちろん、たくさんの人が問題の深刻さを理解していますが、高齢化なども関係し、時間と労力をかけることができないのだとか。

農家の方たちと一緒に
赤土問題に向き合う
「農業環境コーディネーター」

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自然のことは大切にしたいけれど、当事者意識を持つことはなかなか難しいもの。きっと、そんな思いは多くの人に共通していることでしょう。それは、沖縄の農家の方だって、きっと同じ──。

そんな考えを少しでも変えようとしている、農業環境コーディネーター・大浜光弘さんにお話を聞きました。

大浜光弘

1991年生まれ。沖縄県石垣市出身。幼い頃に親の仕事の都合で石垣市から離れ那覇市で育つ。2013年、大学卒業後、豊かな自然にあふれたふるさとでの生活を求め石垣市へ戻り、石垣島の農業環境行政に携わり、2年後の2015年より農業環境コーディネーターとして活動。現在に至る。

──少し聞きなれないご職業なんですが、どんなことをしているんですか?

「基本的には、赤土の流出に困っている農家さんと行政や企業をつないで、その対策を支援するといったことですね。また、普及・啓発活動をして、興味を持ってもらうこともしています」

──そこで、グリーンベルトなどの対策も広めるんですね。

「はい。グリーンベルトは赤土の流出を食い止める方法として、とても効果的な対策の一つだと考えています。

今、石垣島の作物の大部分をサトウキビが占めています。サトウキビの作付け(※¹)は4月までに収穫して、早くて7月から植え付けをします。この収穫から植え付けの期間は畑が空いている状態で、梅雨と台風の時期が被っているんですよ。そこに雨が降ると、どうしても土が流れてしまいます。だから、植え付けまでの間に、肥料となる植物(緑肥)を植えたり(※²)、紅芋とかを植えてサトウキビとの輪作を推進したりして、なるべく畑が長い間空かないような対策も進めています。

でも、『赤土問題に取り組みましょう』と言っても、何も知らない人にとっては響きが良くありません。だから、ひまわり畑での結婚式という企画を行いました。『なんでひまわり畑なの?』という疑問を持ってもらい、探っていくと赤土問題にたどり着くといった形ですね。ひまわりの種まきイベントに参加してくださった人たちも楽しそうだったので、毎年やっていく方向です」

※¹サトウキビの作付けには①夏植え、②春植え、③株出しという3つの栽培体系があり、それぞれ作付け時期が異なるが、石垣市のサトウキビは「7~9月植え付け・翌々1~4月収穫」の夏植えが主流である。

※²裸地を覆うために栽培される植物、またはその方法のことを「カバークロップ」という。

──沖縄に住んでいない人でも赤土問題に対してできることはありますか?

「間接的なことにはなるんですが、石垣島の農作物を買っていただければ、農家さんが対策をできるようになるのかなと思います。やっぱり、農家さんができない、やらない理由の一つとして、経済的な問題もあるので。

今は、僕たちがいるから、県の補助金などを使って対策ができているんですけど、ずっと続くわけではないですし、毎年やらなければいけないことなので、費用がかかります。でも、農家さんたちが自主的に対策をできるような仕組みを作っていかなきゃいけないと考えていて、それには収益が上がらなきゃいけないのかなと思います」

──県外での赤土問題の認知度は、どれくらいあると思いますか?

「具体的にはわかりませんが、石垣島の環境問題に取り組んでいるのは、県外の人が多いです。島では、『雨が降ったら、土が流れるのは当たり前さ』なんて言う人もいるくらい。もちろん、土を守ろうと対策をしている人も、たくさんいるんですけどね。

だけど、周りがこの問題を大きく取り上げてくれれば、地域の人たちも変わっていくのかな、と個人的には思ってます」


約40年も前から取りざたされている問題だからこそ、多くの人の意識は、知らず知らずのうちに薄れてしまったのでしょう。でも、世界に誇れるほどの美しい沖縄の海が汚れてしまうことは、やっぱり悲しい──。知っていた、知らなかったにかかわらず、今、みんながこの問題について考えるべきなのかもしれません。

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