旧白洲邸と武相荘の海老カレー
屋外で食べるカレーっておいしい
そこで!
庭園や公園を眺めながら食べられる
おいしいカレーを集めました
#4
日本で初めてジーンズを履いた男。GHQから従順ならざる唯一の日本人と呼ばれた男。戦後の日本を裏側で支えた男。おしゃれで私心がなく、誰にも屈せず、誰よりも優しい。そんな白洲次郎の人物像を物語るエピソードのなかでも親近感を覚えるのは、野菜が苦手だったという話です。彼が農業に励みながら、家族とともに晩年を暮らした鶴川にある自宅は、武蔵と相模の境に位置することに無愛想という言葉をかけて、本人によって名前がつけられました。それが、旧白洲邸 武相荘です。
武相荘と名付けられたのは、昭和18年(1943年)に彼が引っ越してきたときです。当時と比べると、近隣の様子は大きく変わってしまったものの、武相荘は当時とほとんど変わらぬ佇まい。そこには、竹林のほか、季節ごとに様々な花が咲く庭園があり、夏はカブトムシやクワガタも見つかる豊かな環境があります。
入口にある大きな門は、武相荘の周りが開発され、人が住むようになり、どこからどこが自分の家だかわからなくなってきたために、東京の旧家で使われていたものを運んできて置いたのだとか。母屋の玄関に敷かれているのは、正子の実家から持ってきた巨大なまな板。庭の敷石は、かつて都電の線路に使われていました。庭に鎮座する小さなお地蔵さまは正子のコレクションのひとつで、鎌倉時代につくられたもの。三重塔には次郎の遺髪が収められていて、駐車場には戦国武将の加藤清正ゆかりの旗立て石も置かれています。
そんな武相荘には、白洲夫妻のユニークな感性がつまった庭園を望めるレストランがあります。と言っても、ここは白洲家が実際に食事をしていたダイニング。友人の別荘から運んできた廊下の床板を使用したテーブルとともに、カジュアルに食事を楽しむことができます。
武相荘の海老カレー(2,268円税込)は、正子の兄が、シンガポールで食べて気に入り、家に持ち帰ったというレシピを再現した逸品。とうがらしやブラックペッパーといった刺激の強い香辛料ではなく、クミンなどを使って仕立てていたそう。渋味とやわらかい辛さを感じるルーに、ぷりぷりの海老。紫キャベツのマリネ、自家製ピクルス、自家製福神漬、潰したゆで卵が添えられています。つけあわせは季節によって変わりますが、この卵をカレーに混ぜればよりマイルドな味を楽しめます。野菜やベーコンが入った具沢山なスープもついて、ボリュームはたっぷり。菊型に盛られたライスの上にはレーズンがあしらわれます。
野菜を一切食べなかったという次郎も、このルーをつけて生キャベツの千切りを食べることができたとか。レストランは、11時から15時までランチタイム、18時以降は完全予約制でフランス料理も提供しています。部屋は大小ふたつあり、そのほかにテラス席が利用できます。天気がいい日のランチは、庭の雰囲気と一緒に、カレーとキャベツを味わってみてください。