ミレニアルズにこそ読んでほしい
40代のカレー:不惑のミニマル編

突然ですが私、TABI LABOの平井は43歳にしてこの会社に参加。半年間、平均年齢20代後半のスタッフに囲まれながら仕事をしていて「40代の自分ができることって何?」なんてもやもやしていたので編集部T氏に相談したところ、

「ヒントになりそうな好きな人にインタビューして、記事にしてみてくださいよ」

なんてオファーをもらったので、なんとなく水野仁輔さんの著書『幻の黒船カレーを追え』は、カレーを超えた人生を語る本だったな……と思い出し、40代ってどんな生き方がいいんでしょうか、とインタビューを敢行!

©2019 YOSHIHIRO MIYANOKAWA

せっかくなので、水野さんが考える「40代のカレー」なるものもお願いしたところ、快諾いただいたので、カレーを作りながら20代から30代、そして40代とは? について語っていただきました。

2種類のゴールデンルールの
チキンカレーを作ろう!

今日は40代のカレーという無茶なお願いしたんですが、どんなカレーを?

とても興味深いテーマなんで楽しみにしてきたんだけど、40代を表現するために2種類のカレーを作ろうと思ってます。ベースはゴールデンルールのチキンカレー。これは7つのルールさえつかめば誰でも美味しく作れるカレーなんですよ。

それを40代ってことでアレンジ。1つめはとにかくミニマル。工程を極端に制限して、全ての工程を3分刻みで作る、そして強火縛り。スパイスや材料も最低限だけ、というのにチャレンジしようかと。

2つめははもう少しテクニックを駆使したもの。スパイスも僕がプロデュースしているAIR SPICEの配合に合わせて、弱火も強火も使うっていう発展版。

自分も料理しますけど、最初の時間とか、強火縛りとか条件がハードすぎて想像つかないですね。

40代で到達できたのは
ゴールイメージから逆算して作るカレー

©2019 YOSHIHIRO MIYANOKAWA

これがミニマルなチキンカレー!7つのルールをそれぞれ3分刻。しかも強火だけで作ったとは思えない完成度ですね! 食べる前に、どこに40代のエッセンスが込められているか教えてください。

簡単に言うとゴールに向かって極力シンプルにした感じ。それも単にシンプルではなく、必要なことだけをしたというところが40代。

なぜかを説明するために20代からを振り返ってみると、その頃はとにかく美味しいカレーが作りたくて、しかも体力もあるから玉ねぎを炒めるのに30分集中するとか、すべての工程に全身全霊。とにかく今までにないものを作ってやろう、という気持ちでいっぱいだった

でも、うまくいったり、そうでもなかったりして、成功ポイントが見えてなかった。そうすると、うまくいった時を踏襲するようになってしまって、バリエーションが広がらなかったりして不満だったのも確か。

30代途中になって、それだとダメかなと感じて全体を見ることが必要なことに気づいたんですよ。だから何かをする時、全てに理由をつけるようにした。「なぜ今、スパイスを入れたのか?」「なぜ今、木べらで混ぜたのか?」とか。その理由を自分なりに理解しようとした。そうすると、40代になってようやく原因と結果がリンクするようになってきたんだよね。

なるほど!

そうすると、ゴールのイメージを作って、そこから逆算してカレーが作れるようになった。だから失敗することもないし、ゴールイメージはどんどん広げられるから自由になった。美味しくなるポイントに集中することができるようにもなったから、体力的にもラク。

そうすると、例えば、数あるゴールの中で最もミニマルなカレーとかは何なのか?を考えられるようになった。つまり「引き算しきっても自信をもって作れる」。特にこれはシンプルだから、自分の設計や混ぜるテクニックといったカレーの構造が、そのまま出てくるイメージ。

ちなみにこのカレー、試作してません(笑)

試作なしっていうのが「ゴールをイメージできているからこそできる」っていう点を体現してますね。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。