短い立ち襟の「バンドカラーシャツ」が生まれた理由
さらっと羽織るだけでスマートな草食系男子風のファッションが楽しめる「バンドカラーシャツ」。
一般的なシャツとは異なる短い立ち襟が特徴であることから「スタンドカラーシャツ」とも呼ばれるこのアイテム、じつは、ある主婦の“生活の知恵”が込められたアイデア商品だったのです──。
18世紀中盤から19世紀にかけて、繊維、鉄鋼、機械などの分野でイギリスを中心に世界的な広がりをみせた「産業革命」は、主に石炭をエネルギー源にしていました。工場が隣接する都市部は煙や煤(すす)に覆われ、大気汚染によって死者まで出る始末。
“白い無地のドレスシャツ”がもっともエレガントとされていた時代に、そんな環境の屋外に洗濯物など干せるはずもなく、ヨーロッパの上流階級の人たちは、わざわざ空気のきれいな田舎にシャツを送って洗濯から乾燥までをおこなっていたのですが、一般の市民は石炭の煙と煤でいぶされた衣服を我慢して着るしかありませんでした。
ヨーロッパだけでなく、アメリカ・ニューヨークでも同じような事態が起こっていたのですが、ハンナ・モンターニュというひとりの主婦がこんなことを思いつきます。
「ボディ(身頃)は仕方ないにしても、人目につく襟の部分だけでも白く保てないものかしら……そうだ! 襟を取り外して洗えるようにすればいいんだわ!」
そんなアイデアから誕生したのが「デタッチャブルカラー」と呼ばれる、襟だけが取り外せるシャツであり、いつしか襟をつけずに着られるようになったものがバンドカラーシャツやスタンドカラーシャツとして現代に受け継がれているのです。
ちなみに、ボディと襟の色が違う「クレリックシャツ」も、デタッチャブルカラーのシャツに白色の襟と袖をつけて着たことがきっかけで生まれたモデルといわれています。
もしハンナ・モンターニュが現代の人なら「アイデア商品が大ヒット! 年収◯◯億円のカリスマ主婦」なんてワイドショーで特集されていたかもしれませんね(笑)
※上記、諸説あり。