ビジネスでも起こりうる「イングランド代表の失敗」――ベンのトピックス
みなさん、ベンのトピックスにおかえりなさい!
ベンはサッカーファンです(イギリス風に言うならフットボールですが、ここはサッカーとしておきましょう)。結構複雑な理由で、PLのアーセナルとAFCボーンマス応援しています。スペインならレアル、ドイツならバイエルン、イタリアはインテルです。
でも、最初のサッカーの思い出はプレミアリーグじゃなくて、この試合なんです。
2002年6月21日、静岡スタジアム15:30
(イギリスだったら07:30)
イングランド 対 ブラジル
11人対10人
(ロナウジーニョのレッドカードのせいで)
1 ー 2
2002年の日韓W杯の試合です。この時のイングランド代表には、オーウェン、ベッカム、コール、スコールズ、シーマン、キャンベル、ファーディナンドなどがいました。ゴールデン・ジェネレーションです。だけど、この試合でイングランドは敗退しました。
そして、2006年のドイツW杯でもまったく同じことが起こりました。あの年はイギリス人のサッカーファンとしてはとくに辛かった。サッカーを作った国は40年間ワールドカップで優勝していないという状態に……。2006年はオーウェンとベッカムにとって最後のワールドカップでした。
さて、どうして才能がある豪華なメンバーが揃ったイングランド代表が失敗したのか?僕が思う(そして、イギリスのいろんな專門家が分析している)理由は、サッカーとはあまり関係ありません。それはビジネスチームでも起こり得る問題です。
原因①
優先順位の問題
まず最初の原因は、代表チームよりクラブチームでの成功が優先されていたことです。
例えば、マンチェスター・ユナイテッドのファーディナンド、ベッカム、スコールズは毎日毎日一緒にトレーニングをしていました。監督とチームメイトたちは一緒にストラテジーを考え、チームスピリットが強かった。だけど、彼らはそんなクラブレベルのメンタリティーを捨てらなかったようです。
リヴァプールのオーウェンとへスキーとか、アーセナルのコールとシーマン、2006年のチェルシーのテリーとランパードも同様です。イングランド代表においては、しばしば優先は国よりクラブ。経済的にはクラブでの成功のほうが報われるのも理由でしょう。
これは憶測ではありません。
2017年のBTスポーツのインタビューで、ファーディナンドは「若い頃、フランク(ランパード)とは一緒にトレーニングをした仲だけど、自分がマンチェスター、フランクがチェルシーに行ったことで、コミュニケーションをとらなくなった。リバプールの選手とは一緒にビールを飲みたくなんてなかった」といったことを語っています。
どうですか?同じようなことがビジネスでもあると思いませんか?
原因②
過剰な周囲の期待
「イングランドはサッカーのホーム」「俺たちが作った競技だよ!」。イングランドのファンがよく言う言葉ですよ。
まあ、これは選手たちの問題ではないけれど、それぐらい期待が大きいということです。イギリスでは、毎回ワールドカップでは「ガッカリした〇〇年間」なんて言われていますが、イングランド代表がワールドカップで優勝したのは、1966年のことですよ!
イギリスのメディアとファンの期待は大きすぎるんです。
原因③
リーダーの問題
サッカーでも、ビジネスでも、マネージャーは大事ですよね。2002年のワールドカップでイングランド代表の監督だったスヴェン・ゴラン・エリクソンはチームをまとめることができませんでした。
彼はもともとイタリアのセリエAのSSラツィオの監督でした。エリクソンが成功した1999〜2000年のシーズンでSSラツィオはとてもいいチームでした。だけど、これは彼のリーダーシップは関係ありません。チームメンバーをみればわかります。シメオネ、インザーギ、ネスタ、マンチーニ、ミハイロヴィチ……みんなその後、監督になった選手ばかりです。つまり、それだけ頭のいい選手が揃っていたのです。エリクソンがうまかったのは、彼らを集めること。つまり、お金の使い方です。
でも、それは代表チームでは通用しません。
クラブでは、新しい選手が獲得できるし、システムに合わない選手を放出することも可能です。選手の人材銀行は大体制限ありません。だけど、代表チームの人材銀行は制限があります。お金の使い方じゃないんです。
そして、エリクソンはチーム内でのコミュニケーションもあまりうまくありませんでした。クラブレベルで仲が悪いメンバーたちをまとめられませんでした。
今でもイギリス人がエリクソンの名前を聞くと、レスポンスは「無能」や「冗談」という単語になることが多い。彼の失敗は、代表チームの監督になったこと。多分クラブレベルでの監督としては評判は悪くないけど、そのリーダーシップはまったく別なのです。
結局、チームワークですよね
まあ、イギリスの「ゴールデン・ジェネレーション」は終わりましたが、記憶に新しい2018年のロシアワールドカップでは、イングランド代表はベスト4に入りました。
この時のメンバーは、2002年や2006年がゴールドだとすれば、せいぜいシルバーでしょう。だけど、結果はベスト4です。トッテナム、マンチェスターシティ、チェルシーなどの選手たちが一緒に頑張ったし、監督のガレス・サウスゲートは、チーム内コミュニケーションを作りました。
クラブレベルでいろいろな対立があったり、歴史的に変なプライドがあったり……そんなイングランド代表は、チームワークの重要性を教えてくれます。