「ジェンダーフリーの礎」を築いたフランス文学界のミューズ
何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。
それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。
アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?
ボーヴォワールの命日
人は女に生まれるのではない。女になるのだ——。
これほど簡素かつ明快に、フェミニズムを表現した言葉がほかにあるでしょうか。
20世紀の西ヨーロッパにおいて女性解放思想に多大な影響を与えたフランスの哲学者であり作家、シモーヌ・ド・ボーヴォワール。
社会的性差に着目し、女性の自由と解放、そして平等を旗印に生涯闘いつづけた文学界のミューズ。
前述の言葉が冒頭を飾る女性論『第二の性』(1946年)では、女性が自律的、自立的に生きることへの正当性を訴え、今日のフランス女性の在りかたの根幹を築いたとも言われています。
ちなみに、彼女の夫は実存主義の哲学者で仏紙「リベラシオン」の創刊者、ジャン=ポール・サルトル。
この二人、「契約結婚」という、今で言うところの事実婚で結ばれていたことでも有名。
形に囚われない個人主義のフランスらしさというか、夫婦のあいだにおいても、自分に正直に生きることの意味や価値を尊重していたことがうかがえますね。
今日はそんなボーヴォワールが遺した言葉とともに、本当の意味でのジェンダーフリーとはなんなのかを共に考えられたらと思います。
没後37年を迎えてもなお、現代を生きる女性たちの心にきっと響くものがあるはずです。
男は女にすべてを与えるよう求む。
女がそのようにすべてを捧げ
生涯をかけて献身すると、
その重荷に男は苦しむ。
「幸福」を保障するものが
自己認識ではない。
けれど、幸福の味方であり、
そのために戦う「勇気」を与えてくれる。
お互いが憎悪しあっていながら
それでも相手なしにはいられないというのは
もっとも誠実な関係や、
もっとも刺激的な関係では決してない。
あらゆる人間関係のなかで
もっともみじめな関係である。
結婚にのしかかる呪いというのは、
与えることに喜びを見出そうとせず
互いに求めることばかりで、
頻繁に個人が「強さ」よりも
「弱さ」で繋がってしまうことにある。
完璧な勝利を得るための第一歩は
まずその自然な区別によって、
そしてそれを通して
男と女は同胞であるということを
はっきり肯定することが不可欠である。
夫を捕まえるのは、技
とどめておくのは、努力。
すでに在るこの世界のなかで
自由の時代を勝ち得るかどうかは
すべて人間次第である。
この思考の勝利を手に入れるためには
男と女がその分化を越えて、はっきりと
友好関係を肯定すること。
それが何よりも大切なこと。
もし、女性の問題が
ひどくバカげたことだとしたなら
男たちの傲慢さが、
それを「議論」としたからに他ならない。