美容・製薬業界に激震。収益の一部を「カリ基金」に支払うことを義務化
「オーガニック」や「サステナブル」という言葉が、もはや当然になりつつある美容業界。環境問題への意識の高まりとともに、消費者の目はますます厳しくなっている。
美容業界が長年頼ってきた豊かな自然の恵み。その恩恵と引き換えに、生物多様性の損失が加速している現状がある。今年11月に開催された生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)で提示されたのは、まさに"自然からの請求書"と言えるだろう。
企業は、生態系への負債を返済できるか?
「BeautyMatter」によると、COP16で採択された遺伝子データ利用に関する新たな国際ルール。それは、化粧品や医薬品、農業など、遺伝子データを利用して利益を上げる企業に対して収益の一部を「カリ基金」に支払うことを義務付ける、という画期的なものだ。
「企業は、自然保護に相応の負担をする必要がある」
「Greenpeace Australia Pacific」のGlenn Walker氏は、今回の合意をこう評価する。その言葉の通り、企業は収益の0.1%または利益の1%を基金に拠出する義務を負う。これは、企業にとって新たなコスト負担となるいっぽうで、生物多様性保全に向けた取り組みを加速させる可能性を秘めている。
「カリ基金」が照らす
先住民コミュニティの未来
カリ基金の大きな特徴は、その多くが生物多様性のガーディアンである、開発途上国の先住民コミュニティへの支援に充てられるという点だ。先住民コミュニティが長年培ってきた伝統知識や文化こそ、生物多様性保全の鍵となるのだから。
彼らの伝統は、現代社会においても、持続可能な資源管理や環境保全のモデルとなりうる貴重な知恵の宝庫。カリ基金は経済的な支援だけでなく、伝統知識の継承や文化の振興を通じ、先住民コミュニティのエンパワメントを促進する役割も担うという。
クリーンビューティーのその先へ
合成生物学との向き合い方
今回のCOP16では、もうひとつ美容業界の未来を左右する重要な議論が行われた。それは、生物を分子レベルで操作し、新しい機能をもたせる「合成生物学」の利用に関するものだ。
合成生物学は、希少な天然資源の代替や、環境負荷の低い製造プロセスを実現する可能性を秘めているいっぽうで、予期せぬ生態系への影響や倫理的な問題など解決すべき課題も多い。
クリーンビューティーが世界的な潮流となるなかで、美容業界は環境保護や倫理、そして革新のあいだで繊細なバランスを取りながら、未来への道を切り開いていかなければならない。COP16での議論は、その難しさを改めて浮き彫りにしたと言えるだろう。