Z世代はバーがお嫌い?新たな社交場「サパークラブ」とは

近年、Z世代の若者は、従来の飲酒を伴う社交文化から距離を置き、新たな交流の形を模索している。

ある調査によると、英国では18~27歳の約21%が飲酒を全くしない、または過去に一度も経験したことがないと回答しており、飲酒文化の変化が顕著になってきたという。

日本においても、月に1回以上飲酒をするZ世代は8割に達しているものの、高アルコール飲料の消費は減少傾向にある。この背景には、健康意識の向上、SNS上での自己管理の必要性、飲酒を伴わない新たな社交スタイルの模索といった要因が影響していると考えられる。

このようなトレンドのなかで、Z世代の関心を集めているのが「サパークラブ(Supper Club)」という新しい社交の場である。

これは、友人や見ず知らずの人たちを自宅に招いたり、こじんまりとした空間に集まって食事や会話を楽しむイベント。

その起源は1930年代のアメリカ・カリフォルニアに遡り、当時は上流階級の社交場として人気を博した。現代のサパークラブは、よりカジュアルでオープンなコミュニティとして機能し、多様なバックグラウンドを持つ人々が食を通じて交流する場となっている。

Z世代にとっての魅力とは?トレンドの背景も

Z世代の間でサパークラブが注目を集めている背景には、いくつかの社会的な変化が関係している。これらの要因が相互に作用し、従来のバー文化に代わる新たな社交の形として、サパークラブが広がりつつある。

・孤独感の増大と対人関係の希薄化

Z世代は、他の世代と比較して強い孤独感を抱えていると指摘されている。幼少期に家族と共に食事をする機会が少なかったことや、共働き家庭の増加によって家庭内での交流が減少したこと、パンデミックによる隔絶のような社会的要因などが一因だ。

また、SNSの普及によりオンライン上でのコミュニケーションが主流となった結果、リアルな場での対話を求める欲求が高まっているという側面もある。

このような状況のなか、サパークラブは人とのつながりを深める場として機能している。同じ趣味や関心を持つ人々が集まり、共通のテーマに基づいた食事や会話を楽しむことで、自然な形での交流が生まれやすい。これがZ世代にとって、新しい社交の場としての魅力を持つ要因となっている。

・健康志向の高まりと飲酒習慣の変化

Z世代の特徴として、健康志向の高まりが挙げられる。昨今のウェルネス意識の向上によってアルコール消費を控える傾向が強まっており、世界各国で顕著な傾向となっている。

サパークラブは、アルコールを摂取しなくても楽しめる社交の場として、Z世代の価値観と合致している。食事を主軸としながら、飲酒を前提としないイベントやコミュニティを提供することで、健康を意識しつつ人とつながる新しい方法としての役割を果たしているのだ。

・サパークラブが提供する“体験価値”

Z世代は、単に「食べる」や「飲む」こと以上に、「体験そのもの」に価値を見出す傾向がある。

サパークラブは、特定のコンセプトに基づいた空間演出や料理の提供を行い、SNS映えするユニークな体験を提供することに成功している。これにより、参加者は単なる食事以上の特別な時間を過ごすことができ、結果としてサパークラブの人気が高まっているわけだ。

また、こうした場所の多くは予約制や会員制を採用していることが多く、「特別な体験ができる」という限定感はさらにZ世代の関心を引きつける。

 

こうした背景から、サパークラブはZ世代にとって単なる食事の場ではなく、特別な体験を通じて新たな価値を提供する場へと進化しているのだ。

ライフスタイルの変化に伴い、
サパークラブは「新たな社交のスタンダード」に

サパークラブの人気は、単なる飲酒文化の変化というよりも、ライフスタイル全体の変革を示すものと言える。

今後は、「ウェルネス」や「サステナビリティ」など、社会的なテーマを題材としたサパークラブも増加すると予測されており、より多様な形態が登場する可能性が高い。

また、企業のブランディング戦略としての活用も進みつつある。

たとえば、一部の企業はサパークラブの形式を用いたイベントを開催し、ブランドの価値観を直接消費者に伝える手法を採用し始めている。特に日本では、既存の飲食店がサパークラブ型のイベントを企画する動きが出始めており、今後さらなる発展が期待される。

サパークラブという新しい社交の場は、今後もZ世代を中心に広がり続けるだろう。

従来の飲酒を中心としたコミュニケーションのあり方が変化しつつあるなか、より洗練された社交の形として、今後のスタンダードになっていくかもしれない。

Top image: © surachetsh/iStock
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